好きだからずっと一緒にいたくて
離したくなくて
でもそんなのは束縛と同じだ――
鎖
クラピカが俺を訪ねてきた。
もうここ最近、ずっと会っていない。お互いに忙しくて、会いたくたって会えないから。
特にクラピカは、世界中を飛び回っているから、
「会えない」という寂しさよりも、「心配」という不安の方が大きい。
だから、今日みたいな貴重な時間は何よりも大切な時間だった。
「・・・ただいま。ちゃんと勉強しているか?
心配で仕事が手につかないのだよ。だからわざわざ見に来てやった」
・・・なんて相変わらずな口調で、連絡もなしに突然帰ってくることもしばしば。
そんな状態が、もう半年も続いている。
他愛ない会話で笑ったり、抱きしめあったり。
・・・ガラじゃねぇけど、それが今の俺の、一番の幸せだった。
何より、クラピカが無事でいてくれることが
俺には一番、嬉しかった。
でも
今日はクラピカの様子がいつもと違う。
本人は元気に振舞ってるつもりだろうけど、俺にはなんとなく分かった。
いつのまにか、眠っていた。
記憶にあるのは
クラピカの不安そうな笑顔と
ぽつりぽつりと漏らした
こんな言葉。
――――私がこんなにお前を好きでも
お前はいつまでも私を好きでいてくれるか分からない。
今は好きだと思っていても・・・たまにしか会えない私を
お前はいつか飽きるかも知れない。
クラピカが
そんな事を心配していたなんて知らなかった。
クラピカのことなら全部分かってるつもりだった。
いつも強気で
そんな素振りちっとも見せてくれないから。
気付いてやれない俺は
情けない。
でもお前は本当に自分勝手だから
俺を置いて、また一人でどこかへ行ってしまうかも知れない。
絶対にちぎれない鎖で、いつまでも俺の傍に繋ぎとめておくことは出来ないのだろうか。
ふと目が覚めて、隣で眠っていたはずのクラピカはもう身支度を整えていた。
「そろそろ行かなくては・・・・」
ああ、そうか
もう
時間か。
「頼むから、音信不通にはなんないでくれよ?」
笑いながら言っても
冗談に聞こえない。
「空港まで送るよ」
・・・・・
土曜日の空港のロビーは混みあっていて、
周りの雑音がレオリオの声をかき消してしまう。
それが、私を悲しくさせた。
飛行船のチケットを握り締めて、搭乗ゲートに向かう足を止める。
「・・・どした?忘れもんか?」
レオリオも立ち止まって、私の顔を覗き込む。
目が合うたび
触れ合うたびに
幸せなのだと実感できる。
「・・・キスして・・・・」
もちろんまともに顔なんか見れなくて、ずっと自分の袖に目線をこじつけていた。
なんでこんなことが言えたのだろう。
「・・・、人前でイチャつくのは嫌いなんじゃなかったのか?」
苦笑した声が、心地いい。
「・・・たまにはいいだろう?」
「俺はいつでもその方がいいんだけどなぁ」
長い指で顎を軽く持ち上げられて、目線が合う。
「・・・・・・・そんな悲しい顔すんな。
ちゃんと――帰ってこいよ」
温かい唇の感触。
いつまで経っても忘れない。
何故だろう。
いつもは嬉しくてたまらないのに
その時のキスは確かに
涙の味がした――・・・・
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