いつだって一緒にいてれくないと、不安で泣きたくなる。
不安
レオリオが帰って来ない。
夜もすっかり更けて、外は激しい雨が降っている。
その雨の音が
この静かな部屋の中にだんだん押し迫ってくるような気がして
怖い。
もう何時間
待っているだろう。
チクタク、チクタクと時計の秒針が残酷に時間を刻んでいく。
今日はめずらしく二人とも休みが取れて、楽しい休暇になるはずだった。しかし―――・・・
「わりぃ、クラピカ。仕事だ」
昼頃、レオリオのケータイに連絡が入った。
レオリオは大学病院の研修医で、仕事が入れば休日でもお構いなしだ。
そんなのはいつものことで。
「ああ分かった。・・・いってらっしゃい」
私は笑顔で彼を送り出す。せっかくの休日をひとりで過ごすのは少し寂しい気もするけど。
少しでもいいから
傍にいてほしい。
そんなことを心の片隅で思ったけれど・・・そんなワガママを言って彼を困らせる訳にはいかない。
きっと疲れて帰ってくる。だから笑顔で迎えよう。
そう
ずっとそう強く思い続けて
待っていた。
もう
何時間待っている?
今日みたいに遅い日は、必ず家に連絡を入れてくれるはずなのに。
「ただいま」
いつもなら、通る声と共に慌ただしくドアが開いて
「ったくも〜、なに泣いてんだよ、子供かっつーの」
そう言って私を抱きしめてくれる。
「バカ。泣いてなんかない」
それがとても嬉しくて、その温もりで心底安心できた。
でも今は
ひとり。
不安で、不安で、泣きたくなる。
抱きしめてくれる長い腕も
名前を呼んでくれる低い声も
私のもとにはなくて。
ひとりは慣れているのに。
実際私は何年間もひとりで生きてきた。
ひとりで・・・
でも今は違う。
レオリオが私の傍にいてくれる。
そう
彼が傍にいるのが当たり前のことになって
ちょっと帰りが遅いからってこんなに不安になるなんて
私らしくない。
もう二度とレオリオに会えない訳じゃないのに。
でも
心配なんだ。
不安なんだ。
また一人になるのが
たった一人の大切な人が、いなくなってしまうのが。
時計の音がやけに頭に響く。
少し大きめなテーブルの上いっぱいの料理はとっくに冷めて、もうひとりで食べる気もしない。
一体何時間
私は待っているのだろう。
「・・・・クラピカっっ」
ドアが壊れそうな勢いで開いた。
半日ぶりの
レオリオの声。
息を切らせて、全身ずぶ濡れだった。
「ごめん!連絡する暇が無くて・・・クラピカ?」
そこにレオリオが居るという事実を確かめたくて、思い切りレオリオを抱きしめた。
「バカバカバカ!・・・心配したんだぞバカ!!」
安心感で涙が出てきた。恥ずかしいとか、情けないとか。
そんなことを気にする余裕は無かった。
「・・・泣くなよ」
優しく抱きしめ返されて、余計に涙が出てくる。
「・・・泣いてなんかない!」
そんなに優しくするな。
要らない涙だけだ
出てくるのは・・・・
「嘘つけ」
レオリオは
ずるい。
「だから泣いてなんか・・・・っん・・・」
こんな時に、こんな優しいキスをするなんて
レオリオはずるい。
愛しすぎて
不安だけが募る。
だから怖い。
でもこうしてレオリオは必ず帰ってきてくれる。
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