火照る肌。ぼやけた視界。
いやらしい気分になるのはオレだけか?
お風呂
そもそも私は娯楽に映画など見たことがなかった。
レオリオと住むようになってから
いろいろ楽しいことを教えてもらった。
街に出て普通のカップルと同じように並んで歩いて
手を繋いで
誰もいないエレベーターでキスをして
オシャレなカフェに連れて行ってもらったり
遊園地にも行ってみた。
そんななんでもないことが、私にはこの上ない贅沢だった。
ばちが当たらないか、心配にもなった。
雨の日は二人でよくビデオを見ていた。
その日はたまたまレオリオが珍しくホラー映画を調達してきた。
理由を聞くと「何となく」だそうだ。
夜9時ごろ、いつものとおり部屋を暗くして、軽く触れ合える程度に寄り添って鑑賞する。
映画は2時間ほどで終わった。
「ふうー、怖かったー。でもおもしろかったー」
レオリオは軽くあくびをしながらのっそりと立ち上がり電気をつける。
「・・・ん、どうしたクラピカ?」
いつまでも硬直している私を見てレオリオは不思議そうな顔をする。
正直、私は相当の恐怖を感じていた。
これが本当に人間が創造した架空の物語なのか。
この私がまさかこんなもので動揺するなんて・・・
「――クラピカ?」
下から顔を覗き込まれて、私はハッと我に帰る。
「おいおい、そんなに怖かったのかよ?(笑
とりあえずオレ、先に風呂入ってくるからな。
コーヒーでも飲んで待ってろ」
そう言うとレオリオはさっさと風呂場へ向かってしまった。
取り残された私は余計な事ばかり考える。
今この部屋には私一人。
一人・・・?もしかしたら誰かがいるかもしれない・・・
一体誰が・・・・?
・・・・・・・・・・・・・・、い、以前の私は何処へいった!?これではまるでそこらのか弱い女子大生みたいじゃないか!!
そうだ、気を高く持て。今は念は使えずとも今までの経験が・・・――
カタン。
触っていないコップがテーブルの上に転がる音がした。
同時に私は風呂場へ走った。
そのときオレはシャンプーの泡のせいで眼が開けられなかった。
だからドアの向こうで声がして、実は結構怖かった。
「・・・レオリオ・・・、あ、開けていいか・・・?」
それがクラピカだとわかったとき、心底安心した。
「すまない、ちょっと、ここにいてもいいか・・・?」
風呂のドアを少しだけ開けて、遠慮がちに顔を出す。
「いいけど・・・オレ、前隠した方がいい?」
「い、いや、私が後ろを向くからその必要はない///」
5分ほどたって。
オレは湯船につかりながら、半開きのドアの向こうのクラピカの背中を見つめながらこう言う。
「一人でいるの、やっぱ怖かった?」
「!!ち、ちがう!!・・・・その、・・・ちょっと寂しくなっただけだ」
こちらを振り向くことなくクラピカは小さくつぶやく。
図星ですと自分から言ってるようなもの。
ほんっとにかわいい。
かわいすぎて、あたふたする顔が見たくて、いじめたくなる。
「じゃあそんなところにいないで、こっちこいよ。一緒に入ろうぜ」
「な・・・っ!!こ、ことわる!!」
「えーなんでー。最近、っつーか半年くらい一緒に入ってないじゃんかー。
そんなところで一人で居ると、部屋の奥からかすれた声が・・・」
「〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
クラピカはたまらなくなって、泣きそうな顔で、壊れそうな勢いでドアを開ける。
「だからこっちこいって。オレがいれば平気だろ?」
確信犯の笑み。
クラピカはそれに気付いたのか、顔をゆがませる。
「・・・服を脱ぐから後ろを向いてろ」
「オレが脱がせてやろうか?」
「いいから後ろを向いてろ!」
はいはい、しょーがないな。
静かな夜。
ここにはオレたちしかいない。
――服を脱ぎ捨てる音。下着を外す音。
ドアを閉める音。濡れた床をピチャピチャとゆっくり歩く音。
湯船の中に入ってくる音。
クラピカがたてるひとつひとつの音に欲情してしまう。
たかがアパートの浴槽は狭いから
ただでさえオレは人より身体も大きいし身長もあるから
「ば、ばか!!まだこっち向くな!!///」
クラピカが入ってくると、お湯が半分以上溢れ出ていってしまう。
「もう前向いていいだろ?」
「・・あ、ああ」
ベッドの中で見るよりも
白くて、柔らかそうな肌。
――触れたい。
しかし肝心のクラピカさんはご機嫌ナナメのようで。
「おーい、なんだよ、そんな顔して」
「う、うるさい」
「なんだよ、おまえから一緒に入ろうって言ったんだろー?」
「言ってないのだよ!」
返す言葉に困っていると、クラピカは口元までお湯につかって、顔を真っ赤にしてこう言う。
「だって・・・・まだ、やっぱり恥かしくて・・・っ」
――クラピカは
オレのスイッチを入れるのが本当に上手くて
それは例えば、無意識のうちにしている官能的な仕草だったり
予想外の嬉しい一言だったりする。
それでもなりふり構わずめちゃくちゃにしたいと思わせるほどオレは昂ってしまって
冷静でいられる自信なんてこれっぽっちもなくなってしまう。
「!ちょ、なにして――」
たまらずにクラピカを後ろから抱きすくめる。
「クラピカ・・・オレ、心臓止まりそう・・・」
クラピカの耳元で熱い吐息を吹きかける。
その刺激にクラピカは肩をすくめて小さく声をあげる。
そう、心停止寸前だった。
愛しすぎて
綺麗すぎて――
病気かもしれない。
クラクラする。
胸が締め付けられるように痛い。
目の前の濡れた耳朶を優しく甘噛みして、抱きしめる腕に力を込める。
それに応えるように、クラピカはオレの胸に桃色に染まった頬をすりよせてくる。
「かわいい、クラピカ・・・」
情けない話、
オレはこの時点で既にイキそうだった。
もうヘトヘトだった。
クラピカの全てが艶かしかった。
お湯で濡れた髪も、火照って上気した肌も、とろんとした眼差しも――
やばい
まだキスもしていないのに・・・・
後ろから抱きしめたまま、自分を落ち着かせるようにしてクラピカの首筋に顔を埋める。
ほどよく濡れた肌を存分に楽しんで、後ろから両手をその小さな胸のふくらみへ移動させる。
お湯の中でのその行為は、いつもと違いなんだか不思議な感覚になる。
色づいた胸の先端を指先で丁寧に撫でると、クラピカは切ない溜息を漏らす。
たまらなくなって、クラピカを湯船の中に膝立ちにさせて、
敏感になった乳首に唇と舌を押し当てる。
角度を変えるたびに、クラピカは甘い声をあげた。
「・・・・ごめんクラピカ、オレもうやばい・・・」
そう呟いて、クラピカを抱き上げて湯船から出る。
華奢な体をゆっくりと下ろして、立ったまま壁に追い詰める。
――逃げられないように。
「キスしていい?クラピカ・・・」
緋色に染まった瞳を見つめて、顎に手をかける。
返事はなかった。
そのかわり、クラピカからの甘いキスが返ってきた。
先に舌を入れたのはオレだった。
そのひょうしにどこかのボタンに手を引っ掛けて、上からシャワーを浴びるハメになった。
しかしそんなことはどうでもよかった。
むしろいい演出になったと思う。
長いキスを楽しんで、名残惜しそうに唇を離す。
すぐにクラピカを後ろに向かせて、顔を壁に押し付ける形になった。
ゆっくりと確かめるようにクラピカの身体のラインをなぞる。
そして片手をするりと太腿へ移動させる。
「・・・っ、あ・・・」
クラピカは今までとは違った反応を見せる。
じらしつつも確実に中心へと指を這わせる。
充分すぎるほど濡れた箇所へ指を差し入れると、クラピカは身体をよじって吐息を漏らす。
「・・あ・・、やだっ・・っ」
身体を更に密着させて、指を一気に奥へ進める。
「おまえの”いやだ”は、”抱いて”にしか聞こえねぇよ・・・」
ゆっくりと指を抜いて、同時に後ろから既に熱く固くなった肉棒で一気にクラピカの深奥まで貫く。
「おまえがこうやって乱れてくの見ると、すっげぇそそられるのに・・・」
その夜は長かった。
風呂場で果てた後、一旦ベッドで休憩し、再び愛し合い、汗を流す為にもう一度風呂に入ることになった。
もう深夜2時だったが、幸い二人とも仕事は休みだ。
レオリオは最初に私を洗ってくれた。
シャンプーもしてもらったのだが、とても丁寧で気持ちがよかった。
身体もすみずみまで泡だらけにされて、手のひらでやさしく洗ってくれた。
その手際のよさと器用さが、まるでエステティシャンのようだったから、正直にそう言ったら、「ばーか、おまえだからだよ」と笑顔で言われた。
今度は私がレオリオを洗ってあげた。
シャンプーもしてみたのだが、湯が耳にも鼻にも口にも入ってしまって苦しそうだった。
しかしレオリオは嬉しそうに「ありがとな」と言って笑ってくれた。
2007/09/17
クラピカを抱いてみたいし、レオリオに抱かれてみたいです。
選べない。(まがお)
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