口を開けば小言ばかり。なんて可愛くないんだろう。
でも、心配なんだから、仕方ない。



願い




こんなこと、私が言えた義理じゃない。分かってる。
だけど、言わなくちゃ、気がすまない。この性格は、直らない。

「レオリオ、おまえが一番よくわかっているだろう?
朝食は一日のエネルギー源だ。しっかり摂らないと身がもたな――・・・」

ほら、またこうだ。
苦しいくらいに抱きしめられて、溶けそうなくらいのキスをしてくる。・・・朝っぱらから。
私のはちきれそうな心配をよそに。いつもこうして最後まで言わせてくれない。
そんなキスをされたら、送り出すのがつらくなる。

最近のレオリオは徹夜続きで、ろくに寝てもいない。食べてもいない。
それなのに。

「コレで充分だ。心配すんなよ、途中でなんか買って食べるから。いい子でお留守番してろ」

抱きしめたまま、今度は拗ねた子供をあやすように、頬に軽いキス。

「わ、私はそういうことを言ってるんじゃなくて・・・!」
――何も言えない。

「それでは行って参ります、姫」
この男は、この短時間に何回キスをすれば気が済むんだろう。
最後にこんな、掠めるようなキス。

名残惜しそうに離れる唇と長い腕。一瞬の切ない表情。
それでも笑顔を見せて出て行く彼の背中を目で追った。

「・・・・・・・・バカ」
まだ余韻の残る唇にそっと指で触れて、顔が赤くなるのを意識しながら、呟いた。

私の願いは一つだけ。
あなたが笑顔で帰ってきて、その温かい腕で、私を抱きしめてくれること。



2005/08/20
ワンパターンだけど、なんだか幸せ。
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