犬
「――恋愛至上主義?笑わせるなよ。
まあ君はまだ30代だけど、その年になってそんな若者気分でいるってことは、
そりゃあ生きがいを見つけられてない証拠だよ。気の毒に。
そりゃあオレも恋をしたよ?そして結婚もした。子供も出来た。そして今に至る。
幸せだよ?そりゃあ。でもね、人生には恋なんかよりも面白いことがたくさんある。
結婚をして子供が出来たらそこでもう終わりだ。恋をする時間は終わったんだ。
それからオレはひたすら働いたね。仕事だよ仕事。
オレは犬と呼ばれてた。しかしね、頂点を目指すなら通る道なんだよ。
なんと言われようとね。そして高見に上り詰める・・・完璧な自己実現だ!
これ以上の生きがいがどこにあるっていうんだ?
なあレオリオ!」
「――カッコイイと思いません?」
「・・・え?」
「一生夢を持ち続けて、一人の女に恋をし続けて、自分の使命を果たして死んでいく――
恋愛至上主義が自己実現に繋がるんですよ。
オレも彼女も、そして医師として働くことで一人でも多くの患者さんが幸せになれるかもしれない。
みんなハッピーでいられるんですよ。これも男らしい生き方じゃないっすかね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「じゃすんません、今日は帰ります。ママとパパと一緒に寝るって、子供たちがうるさいんですよ」
2008/11/27
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