私の最大のコンプレックスは
もうどうにもならない。




独り言




テレビや雑誌に出てくるグラビアアイドルはみんなみんな、
これでもかというくらいに美しいバストを持っている。

私は彼女たちによく嫉妬をする。
羨望ではない。くだらない感情。

私は男のことはよく分からない。やはり大きいにこしたことはないのだろう。

以前の私だったら、そんなことは気にしなかった。
まして男として生きる為には、邪魔なものでしかなかった。

レオリオは、こんなにも私を悩ませる。


自分の身体をレオリオ以外の誰かに見せたことはないから
レオリオの言うことを信じるほかない。

――何言ってんだよ、オレ、おまえの胸好きだぜ?
――すごいキレイだって。
――大きさじゃない、形だよ。

レオリオの言うことを疑うわけではないけれど
やっぱり女としては、もう少しくらい女らしいふくらみがあってもいいんじゃないだろうか・・・
その思いは日に日に募っていった。


そんなある日。私はこんな知識を手に入れた。
男に揉まれると大きくなる。

そ、それなら毎晩のようにしている!!
なのになぜ変化がないんだ・・・
まだ足りないのか・・・?

本当か嘘か、考える余裕はなかった。
そのときの私は動揺と混乱で、冷静さを失っていた。
だからこんな突拍子もない行動に出てしまった。


「レオリオ、私の胸を揉んでくれ!!」

寝室のドアを勢いよく開け、就寝準備中のレオリオにかけよった。
私は真剣だった。大真面目だった。

レオリオは眼を大きく見開いて、豆鉄砲を食らったように間抜けな顔をしていた。

「い・・・いやか・・・?」
私が不安げに顔を覗き込むと、レオリオは我に返ったようで、
「い、いや、別に嫌っていうか・・・ぶっちゃけ嬉しいっていうか・・・」

戸惑うレオリオの顔を見て、私ははっと気がついた。


――な、なにをしているんだ私は〜〜〜〜!!!
こ、これではまるで夜這いじゃないか!!

「す、すまない、何でもない!!」
ここまでしておいて何が何でもないのか。
私は慌ててレオリオから離れようとする・・・・が、やはりいつものパターン。
大きな身体にすっぽり後ろから抱きすくめられてしまった。

「なんだよ、いいのかよ?しなくて」
「・・・・・・・・・・・で、出直してくる!!」

レオリオは笑い出して、私のことを「かわいい」と言った。



それから数日後、今度は「牛乳を飲むと大きくなる」という、これまた嘘か本当か分からない情報を得た。
しかしやってみないとわからない。私は毎朝牛乳を飲むことにした。

「よし、がんばろう」
冷蔵庫の前で、ぼそっと独り言をつぶやく。

すべては愛する男のため、私はどんな努力も惜しまない。
そんな私がレオリオの眼にどう映るのかは、あまり想像したくない。



2007/09/07

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