女から誘うなんて、浅ましいですか?





緊張





一緒にいられる夜は、とても嬉しかった。
時間を作って会いに来てくれる彼がとても大好きだった。
優しく抱いてくれる彼が、何よりも愛しかった。


「おやすみ」と交わしたキスは1分前。
隣を見れば、うつろうつろな彼の瞳。

外は満月。冬の夜。
体の芯から凍るような寒さに、クラピカは小さく肩をすくめる。

すると、小さな肩を抱き寄せる、長い腕。
驚いて横を振り向くと、「さむいだろ?」と言わんばかりの、レオリオの笑顔。



ふと、頭によぎった。
セックスの時の彼の表情。囁き。呼吸。体温。

体が急に熱くなった。
いつもと同じ、こんな状況でこんなややこしいことをされたら、余計鮮明に思い出してしまう。
そんなこと、思い出す必要なんて微塵もないのだけれど。


今すぐ隣にある、大きな体。広い胸。長い指先。
その全てで、愛してほしくて。
もっともっと、乱されたい。感じたい。いつものように。



なんてことを考えているんだろう――
そんなことを、頭の片隅で思ってみたけれど、すぐに吹き飛んだ。


どうしよう――
触れたい。抱きしめたい。キスしたい。
抱かれたい――



エッチしたい、なんて、そんなこと、口が裂けてもいえない。
目線で?態度で?どうやって彼に気付かせたらいい?


誘ったことなんてないから。
その言葉の意味すら知らなかった。
いつもいつもレオリオのペース。
それが嫌なわけではないけどれど。

たまには、私から。



「・・・レオリオ」
「ん?どした?」
クラピカの小さな声に、レオリオはちらりと顔だけこちらへ向けて。

「・・あの・・・その、・・・あのな・・・、今夜は・・・・」
明らかに様子のおかしいクラピカを、レオリオはじっと見ている。
その視線だけで、体が熱い。



「・・し・・・・しないのか・・・?」



言ってしまった。
きっと、初めて。

こんなに静かな夜。この心臓の音も、きっともう聞こえてしまっている。
最初は目を丸くして驚いていたレオリオも、そのうち、にやりと悪戯っぽく笑った。

「・・・したい?」
2人の距離が、一気に縮まった。
「そ、そうじゃなくて・・・・・あ、そうなのだけど・・」

途端に恥かしくなって、布団を頭まですっぽり被った。


でも、あっという間に布団を剥ぎ取られて、大きな体がのしかかってくる。
「オレもさ、すっげーしたかった。でも今日おまえ、疲れてそうだったし・・・
でもおまえから誘ってくれるなんてなー」

「だから・・・っ、そうじゃなくて・・・」
「じゃあなんだよ?」


両手首はしっかり押さえられて
もう身動き一つ出来ない。


「・・・・・・・・っ、ぜんぶおまえのせいだ・・・」
「ハイハイ、オレのせいだよな、おまえをこんな体にしたの」

「・・・責任をとれ」

その言葉に。瞳に。
胸が熱くなる。


「・・・キスしていい?」
「・・・いちいち言わなくていい」


そう言って、はにかんで、そっと目を閉じた。唇に感じる甘い感触。
それがとても気持ちよくて、思わずレオリオの広い背中に腕を回した。

このキスのあとは
どうなるのだろう。

そんなことを考えてみたら、頭が真っ白になった。


キスしていい?
――もちろん、その先も。
優しい愛撫に包まれたい。激しい快感に溺れたい。
もっともっと、あなたを全身で感じたいから。

一晩中、私を離さないでください。



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