こんな風にひどく蒸し暑い夜は
布団に触れるのも嫌なくらいで――
潤滑油
「・・・クラピカー」
「な・・・なんだ?」
もう、この言葉しか出てこない。
「・・・・・・・・・あちぃ・・・」
今年一番の熱帯夜。これはやばい。
冷房はない。あるのは手元のうちわだけ。
横にはクラピカ――が、オレの胸にぴったりとくっついている。
想像してもらえばわかる。――相当暑い。
ゆであがる思いで二人分の風をぺらぺらのうちわで送り続けた。
そのたびに、風とともにふわりと香る髪の匂いは言うことないのだけれど――
あいにく救世主扇風機は故障中。
「クラピカ〜あちぃ〜」
「・・・私も暑い」
「じゃあもうちっと離れねぇ?」
当然の提案だと思う。
しかし、当のクラピカは何とも言えない複雑な表情。
――かわいい。かわいいけど。
なんだか気まずい。身動きするたびにベッドがギシギシと揺れる。
そのやたらと響く音には、もう慣れたはずなのに。
「だって・・・」
いつもいつも困らせる。こんな可愛い顔をして。
別に嫌なわけではない。
こうしてオレに触れてくれるのは、むしろ嬉しいのだけれど。
――コイツのタイミングの悪さは、天下一品。
「・・・!レ、レオ・・・」
どうせなら。
「おまえのせいでムラムラしてきたじゃねーか。責任取ってくれよ」
この熱さを二人で分かち合った方がずっと得だから。
クラピカの細い腕をとって、汗ばんだ華奢な体に覆いかぶさる。
驚いたような顔をしていたクラピカも、そのうち恥ずかしそうに微笑んで、
「それはすまなかった」。
――なんて、確信犯の笑み。
いつからコイツはこんな誘い方をするようになったのか。
・・・多分、100%オレのせいだろうけど。
きっと目が覚めたら、シーツもろとも汗まみれだろうから。
あとで一緒にシャワーを浴びに行こう。
こんな暑さも、オレたちにとっては潤滑油になったりする。
2005/08/20
BACK