ほんとはいつもこう思っている。




鳥肌





クラピカの性格は多少難儀であるため、他人とすぐに打ち解けることは出来ない。
こんなに長く一緒にいるレオリオにさえも、あまり素直に接せられない。


でも心の奥では、人並みな乙女心をちゃんと持っているのだ。




時は深夜。
帰るのがすっかり遅くなってしまった。
レオリオはもう寝ているだろうか。


「・・・ただいま」
静かに玄関の鍵を開けて中へ入る。
リビングの電気はついていない。
寝室のドアは閉まっている。

そっと、そのドアに手をかける。
寝室はレオリオの勉強部屋でもある。
レオリオは薄暗い光の中で、机に向かって本を読んでいた。

無造作に投げ出された長い足を組んでいる。
本を持つ長くて綺麗な指。
そして活字を追う表情は真剣そのもの。

(かっ・・・かっこよすぎるのだよレオリオ・・・っ)


そんな自分の恋人に見とれてしまう。
普段は絶対にそんなこと口に出したりしないが、ほんとうはいつもこう思っているのだ。

いつも凛とした表情のクラピカの顔は、見事に弛緩していた。


「・・・なんだよ、帰ってたのか」

寝室の扉から顔を出していたクラピカに、レオリオはようやく気付いた。
本にしおりを挟み、机にパタンと置く。

「どうしたんだよ、そんなところで」
「い、いや・・・なんでもない。ただいま」

「おかえり、クラピカ。待ってたぜ」
そう言ってレオリオはにっこり笑った。

(う・・・・っ!!)
とろけるような低くて甘い声。そんな悩殺的な声で自分の名前を呼んでくれている。
それに、待ってたぜ、なんて。わざわざ寝ずに待っていてくれたなんて。
そして自分を迎えてくれた極めつけの優しい笑顔。


(ダメだ・・・・っっ)

クラピカは胸を押さえてその場にしゃがみこむ。

「!?お、おいクラピカどうした!」
レオリオが心配するのは無理もない。
連日のハードな仕事で、いつ調子を崩してもおかしくないとわかっているから。

しかし当のクラピカは。
レオリオの色気に当てられただけだった。


(・・・・レオリオの笑顔は・・・仕事帰りの私には刺激が強すぎる・・・)

しかしレオリオはそんなことは絶対にあるわけがないと思うだろう。
普段のクラピカを知っているからこそ。


「だ、大丈夫だ。ちょっとめまいがしただけだ」
「・・・ほんとかよ。とりあえず横になっとけよ」

また心配をかけてしまった。
反省せねば。


「それよりおまえ・・・なんだその格好は。スーツのままではないか」
「あ?ああ、帰ってきてずっとあの本読んでて・・・そのままだった」

クラピカをベッドに運んで、クラピカに背を向けてレオリオはクローゼットの前で着替え始めた。

狭い寝室。強制的にその光景が視界に入る。

手早く背広を脱ぎ、ネクタイに手をかける。
そのネクタイを緩める様子に
またしてもクラピカの胸は高まる。

(い・・・っいちいちいやらしい脱ぎ方をするな・・・っっ!!!)

「ん?なに?」

そんなクラピカの熱い視線に、レオリオは不思議そうにクラピカの方に振り向く。

「いや、なんでも」
冷静を装う。
しかし心中穏やかではない。


あっという間にネクタイを取り、白いワイシャツのボタンを素早く外していく。
きちんとアイロンのかかった、シワのない綺麗なシャツ。それが彼の好感度を上げている。

クラピカの服を脱がすときも、これくらい手際がよいのだ。


そして露になった上半身。
いつもいつもベッドの中で、お風呂の中で見ているのに
なんだかとても眩しい。


引き締まった二の腕も、たくましい胸も、まぶしい。
毎晩この体に抱かれているのかと思うと、
もうなんというか
嬉しさを通り越して
鳥肌までたってきた・・・
め、めまいが・・・

フラッ・・・

「く、くらぴかー!!ど、どうした!?」
「な・・・なんでもない、それよりそんな格好でうろちょろするな・・・」
「き、傷は浅いぞ!しっかりしろー!」


彼の裸を見て鳥肌がたつくらい
好きで好きで仕方がない。

これが正真正銘の
恋の病。



2008/07/24
・・・弛緩したクラピカの顔なんて、アナタ、想像できません(汗
ベタ惚れにもほどがあります。でも私はそれくらいレオリオが好きです。
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