服を貫いて容赦なく肌を突き刺すこの寒さ。
耐えられそうにない。
一杯やって体を温めていこうか。
それとも暖房の効いたカフェで休んでいこうか。
いや、この寒さを忘れさせてくれるのは彼女しかいない。
雪
「・・・」
まだ
11月だぞ?
「・・・・・・・」
なんだ
なんだこの寒さは?
オレの生まれた国は一年中あったかくて、コートなんかいらなかった。
だから寒さには耐えられなかった。
日が暮れると一気に気温が下がる。
そして風も冷たい。
まだ
11月なのに。
肩を大きく上まで上げて
小走りに家へ急いだ。
・・・
「お〜いクラピカぁー。開けてくれー死んじまうよー」
やわらかな灯りが漏れる小窓。あたたかそうだ。
早く中に入りたい。レオリオはドンドンと玄関のドアを叩く。
ばたばたと駆けてくる足音。ドアはすぐに開いた。
「おまえ、鍵を持ってるんだから――」
自分で開けろ。
そう言いたかった。
言う前に口をおおきな体に塞がれた。
「・・・なんだ」
「っお〜、寒かったー」
冷たい息。氷のような服。あたたかさはまるでない。
それでもぎゅっとクラピカを抱きしめる腕は力を緩めない。
「いきなりなんだ」
「ん、いや、クラピカあったかいし・・・」
「まったく・・・今日は寒くなると朝言っただろう。なのに上着も持たないで・・・
私の忠告を聞かないからだ。
それに・・・私よりも部屋の中の方があたたかいぞ。早く中に入れ」
「んー、クラピカの方があったかい」
「・・・」
「去年確認済みですから」
「私は暖房器具か」
せめて彼の肌に赤みが戻るまで、こうして温めていてあげよう。
・・・
「クラピカー」
「なんだ」
「布団つめたい」
「まあな」
あたたかいリビングで食事をして
あたたかいお風呂に入って
就寝時間。
寝室に入るのは今朝以来。
ドアを開けて電気をつける。
・・・寒い。締め切っていた部屋の中には寒気が充満している。
ふかふかのはずのベッドも、見るからに冷たそうである。
「オレ・・・ほんとに寒いのだめなんだよ」
「知ってる」
「先に入ってくんない?」
ベッドに。そうすれば、少しはあたたかくなる。
「しょうがないな」
レオリオのためならこれくらいは。
何より彼に頼られて少し嬉しい。
そんなこと口が裂けても言えない。
クラピカのおかげで、ベッドの中はあたたかくなっていた。
――それでも。
「・・・クラピカ」
「なんだ」
「・・・オレの上に乗ってくんない?」
「は?」
今日は、”しない日”のはず。
別に厳密に、する、しない、を決めているわけではないのだが。
「いや、あの・・・寒くて」
毛布を口元までかぶっているのに
まだ寒いというのか。
「・・・しょうがないな」
これで彼が安眠できるのなら
喜んで温めてあげよう。
温めてもらえるのなら人肌がいい。
心も体もあたたかくなる。
外にはしんしんと雪が降り積もり始めていた。
2008/11/1
何を隠そう、私が寒いのだめなんです。人の2倍着こんでおいてまだ「寒い」って言ってますから。
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