ほら、もう春がきた。
外へ出かけよう。
髪の毛
この時期になると体調がすぐれない。
運良く部屋にこもりきりの仕事を任された。
外へ出るとくしゃみが止まらず目がむずがゆくなるのだ。
レオリオは「そりゃ花粉症だろ」と笑いながら言った。
窓を締め切り1日中自室にこもり、パソコンの画面とひらすらにらみ合う。
今日までに終わらせなければいけない。
焦りは無かった。何故ならすでに完成に近かったから。
あと2時間もあれば終わる。
それにしても今さらなのだが、ずっと外に出ないと日にちの感覚がわからなくなったり、気分が暗くなる。
レオリオにも、たまには気分転換にどっか行こうぜとしつこく誘われたが、
目の前の任務をちゃっちゃと片付けたかった。そういう性格なのだ、私は。
そして2時間後。
時刻は丁度正午だった。
(・・・終わった)
ふう、と溜息をつき、体の力を抜く。
・・・なんだか全身がひどく痛い。
ここ数日間座りっぱなしだったから。
肩の荷も降り、久々に外へ出てみようかと思った。
そういえばレオリオは出かけたのだろうか。
思えばリビングにさえ顔を出していなかった。
部屋を出ようとドアに手をかけたそのとき、廊下側からドアが開けられた。
レオリオだった。
「終わった?」
「・・・ああ」
「おいおい、なんつー辛気臭い顔してんだよ。外はもう桜が咲いてるって言うのによ」
「・・・そうなのか?」
「ああ、散歩しようぜ」
レオリオはジーンズに薄手の白いシャツというラフな格好だった。
おまえ、それで外に出るのか。寒くないのか?と言うと、
「外に出てみりゃわかるよ」と。
半ば無理矢理レオリオにシャワーを浴びせられた。
それだけで少し気分がよくなった。
やはりリラックスは大切なことらしい。
椅子に座らされ、ドライヤーを片手にレオリオは私の周りでうろちょろし始めた。
ドライヤーの「ブォー」という音があまり好きではなかった。
そうして髪を乾かしてもらい、一方的な行為ではあったがとりあえず礼をいい、立ち上がろうとしたときだった。
「あー待ったまだダメ。はい座って座って」
優しく髪をとかされて、優しく撫でられる。
いつも思うが、レオリオの手はほんとうにあたたかい。
レオリオは私の髪の毛を触るのが好きなのだと言った。
細くて綺麗な色で、さらさらなのだそうだ。
部屋着のまま外へ出ようとしたら引き止められた。
「えーっと、確かこういう日の為に買っておいた服が・・・」
「おい、こんな格好で待たせるな」
レオリオは慌てて私の手を引いて寝室へと飛んでいき、クローゼットをあさりはじめた。その間私ははしたない下着姿で待っていた。
レオリオが取り出したのはシルクのワンピース。
こんなもの着れない。そういう前に着させられた。
外に出るまで、絶対にこの格好では寒いと思っていた。
しかし玄関のドアを開けた瞬間、あたたかい空気が肌を優しく包んだ。
部屋の中の空気とは明らかに違う、外のにおい。
極めつけのこの青空。
風が吹いている。しかし冷たくはない。
あたたかいのだ。
こんな私にもわかった。
――春がきたのだと。
数日前私が帰宅した際、肌を突き刺すような風が吹いていた。
そして今日外に出てみると、あたたかい。
なんだか嬉しくなった。
伸ばしかけの髪の毛も、あたたかい風に靡いている。
レオリオは私の手をぎゅっと握って、前を向いたままこう呟いた。
「そういやあ、あとちょっとでクラピカの誕生日だなあ」
私は何も答えず、少しだけレオリオに寄り添った。
2009/03/19
外に出たらあんまり気持ちよかったのでこんな話を思いつきました。
ちなみにイメージソングはGLAYの新曲「春までは」(^^)
このあとクラピカはくしゃみに目のかゆさに耐え切れず薬局に行ってマスクを購入しました(^^;
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