レオリオに指輪をもらった。
そして結婚しようと言われた。
指輪
思い出す。
母は左手の薬指に指輪をしていた。
幼い私は母の白い手に美しく光るその指輪にいつも見とれていた。
父も同じように、その大きな手に指輪をつけていた。
仲のよかった二人。そろって光る指輪に、いつも目を奪われていた。
その美しい指輪が真っ赤な血に染まったことまで、思い出してしまう。
しかしそれは忘れたい過去ではない。
忘れてはならない。背負っていくべきものなのだ。
死ぬまでそう思い続けていく。それが私の義務なのだ。
ある日レオリオが指輪を贈ってくれた。
上品なデザインの小さな箱。
開けると、真っ先に頭に浮かんだのは両親だった。
しばらくその指輪の輝きに見とれていると、レオリオはこう言った。
「結婚しよう」
そうして私はレオリオの妻になった。
だからと言って、同棲していたときと特に変わることは無い。
レオリオは相変わらず優しくて、私を愛してくれている。
そしてそれと同じくらいケンカをする。
変わったことは
指輪をはめているということ。
ふと気が付くと左手を見つめていた。
その時間も頻度も多かった。
出かけるとき
とても気になった。
おかしくはないだろうか。
顔を洗うとき
風呂に入るとき
ふと思った。
濡れても大丈夫だろうか。
私の心配は過剰だった。
でも外したくない。
外して一番恐れているのは紛失。
まさかとは思うがそんなこともないとは言い切れない。
そんなの絶対に嫌だ。
きっとレオリオは悲しむ。
それに
こうして自分の手の指輪を眺めているのが好きなのだ。
いつもレオリオのことを思っていられるから。
レオリオの妻であることの証明だから。
だから外さない。
墓の中まで持っていくのだ。
レオリオにそう告げると、いつもの大好きな笑顔で笑われた。
朝起きる。
全身の血の流れが滞っているような感覚が毎朝あるのだ。
つまり私は朝に弱い。
目が醒める。
一番最初に目に入るのはレオリオの寝顔。
不思議だ。いつもこちらを向いている。
寝返りは打つのだろうけど、私が起きるときはいつもこちらを向いて、傍にいてくれている。
背中を見せたことは一度も無い。
そして左手を視界に入れる。
今日も指輪は美しく光っている。
レオリオと結婚してよかった。
2008/11/6
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