海の青と空の青。
その青い色の違いに気が付いたとき、隣には彼がいた。









私はレオリオのつける香水が好きだった。
――いや、その表現は正しくない。
「彼が」つけているから好きなのだ。
毎日つけているからか、レオリオからその香りがしない日はなかった。

媚びるような甘さでもない
地味な目立たない香りでもない。
例えるなら海の香り。寛大で優しく明るい彼にぴったりだった。

その香りにつつまれていると、眠くなる。
急激に睡魔に襲われるのではない。
悩み、気がかり、焦りすべてを取っ払って、自然と夢を見始める。
心からリラックスして穏やかな気持ちになれる。
だから私は彼のそばにいることを好む。
そんな彼の広い胸に抱かれるのは何よりも幸せだった。


ある日を堺に、大好きなその香りはしなくなった。
そのかわり、レオリオに近づくと鼻にツンとくる消毒液の匂いがするようになった。

医者が香水などもってのほかで。
オフの日―といってもほとんど無いに等しいが―以外に、レオリオがあの透明な香水のビンを手にしているところを見たことがない。


レオリオの朝は早い。
そそくさと出かけていく。
それでも彼は必ず笑顔で私に朝の挨拶を唇にしてくれる。

彼を見送って一人になった寝室。
広すぎるベッドはもう冷たくなっていた。
棚の上の香水のビンをそっと手に取る。
部屋中に広がる愛しい香り。

帰ってきたら、消毒液の染み付いたスーツのまま、その温かい腕の中に私を包み込んでくれるのだろう。

そんなことを想像しながら、私の一日は始まる。



2008/11/1
ちなみに私はドルガバのライトブルーが好きです。エタニティーも好きです。

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