甘くて柔らかくてかわいくて。
まるで愛しの誰かさん。
くだもの
「どうしたのだ?こんなにたくさん・・・」
クラピカの視線の先には、
テーブルの丁度真ん中に置いてあるバスケットに入った、色とりどりのくだものたち。
形も違えば、色も違う。まさに多種多様である。
「いつも診察に来てるばあちゃんがくれたんだよ。いつもありがとうって」
レオリオはいつもの笑顔で微笑み、籠の中のくだものを一つ無造作に手に取る。
――ああ、あのよく風邪を引く小柄な――
クラピカはすぐ察しがついた。
いわゆる『フルーツバスケット』をはさんで、
クラピカはレオリオと向かい合わせになる形で椅子に腰を下ろして、頬杖をつく。
「なぁなぁ、これっておまえみたいだよな」
「え?」
「甘くてピンクで柔らかくて可愛くてさ」
レオリオは桃を一つ手にとって、悪戯っぽく笑う。
「なっ・・・・じ、じゃあおまえはこれだ」
と、クラピカが手に取ったのは、まだ固い、若いバナナ。
「・・・マジ?オレ、バナナ?」
「ふふ、冗談だ。そうだな・・・おまえはオレンジかな。
いつも明るくて、うるさいくらいにぎやかだからな」
「それはほめ言葉として受け取っていいんですかね?クラピカさん」
「もちろん」
オレ、おまえのこともこの上ないくらいに褒めたつもりなんだけどなぁ。
「・・・あれ?先生、あれなに?」
診察台に深く腰掛け、まだ床につかない行き所のない足をぶらぶらさせながら
胸に聴診器を当てられている少年は、窓の方を見て、レオリオに尋ねる。
「あーほら動くな!・・・・・あれか?あれはなー・・・・・・やっぱ秘密。」
「えーっ、なんでなんで!?教えてよ先生ー」
少年は不満そうに口を尖らせて手足をじたばたさせる。
「動くなっつーの!大人しくしないとまた注射打つぞ?」
その小さな診察室の小さな窓辺には、今日も淡いピンク色の可愛らしい桃と、
太陽のようなオレンジが、寄り添うように仲良く並んでいる。
夫婦で診療所設定です。
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