白い腕に白い包帯。
巻いているオレはおまえの顔を見れない。




包帯





「・・・おまえさ、なんでこんなに怪我多いわけ?」

レオリオは渋い顔で私の腕をまじまじと見る。
擦り傷、切り傷、紫色の痣がやたらと目立つこの腕を。

「だからいつも言っているだろう。そういう仕事なんだ」
そう、こんな程度の傷ならいつものこと。気にするほどのことでもない。

「じゃあ何でわざわざ毎回オレのところで手当てするんだよ」
気にするほどのことでもないから放置しているだけ。
レオリオに会うと治療してくれる。それだけなのだよ。

「・・・この腕の傷だって、一体何日前のだよ?化膿して黴菌が入ってからじゃ遅いんだぞ」
すまない、そんな認識はなかったんだ。



レオリオは眉間にしわを寄せながらも、傷だらけの腕に真っ白な包帯を手早く、
でもとても丁寧に巻いてくれた。


「頼むから、もうこれ以上オレの寿命縮ませんなよ。
おまえが毎回こんな傷つくって帰ってきたら、オレ、心配でしょうがねーだろ?」

包帯の上から傷を癒すようにゆっくりさすってくれる大きな手は、とても温かくて。
それだけで、その温もりだけでもう完治してしまいそうで。
・・・そう、まるで魔法の手。

「心配するな。・・・おまえがいるだろう」
「そういう問題じゃねーよ。もっと自分の体は大事にしろよ。
ただでさえお前の腕は白くて細いし、
ちょっと力入れたらポキっと折れちまいそうなんだから」
レオリオの大げさな言葉に、私は苦笑する。

「そのときは、おまえが治してくれ」
「分かってるよ。・・・あ、こっちの腕も傷だらけじゃねーか。
ったくおまえはホント世話焼けるよな。ほら、貸してみろ」

「すまないな。・・・でも、私が信じられる医者は
名医のレオリオ先生だけなんだからな。」
私のその言葉に、レオリオは照れ臭そうに頭をかく。

「そんなに信頼されてもなぁ・・・。
でも、おまえの怪我は全部オレが元通りに治してやるからな。
オレの大事なクラピカの体に傷一つでも残ってみろ、大問題だろ?
無理しない程度に頑張って来い。オレはいつでもこの診察室で待ってるからよ。」

レオリオは私の手を取って、擦り切れている人差し指にバンソウコウを巻きつけた。

「よし、これで全部だな」
「・・・ありがとう。では、もう行くからな。・・・仕事、頑張れよ」

「ああ。しつこいようだけど無理だけはすんなよ。・・・あ、待った。」
立ち上がって部屋を出て行こうとする私を捕まえて、
レオリオは私の邪魔な長い前髪を掻き分けて、額に優しく口付けた。

「・・・ここもすりむいてたからな。消毒。」
レオリオが悪戯っぽく笑う。

「・・・・レオリオ、この治療法は私以外の女性にも使っているのか?」
まさかとは思うけれど。一応聞いておきたかった。

「ばーか、これはおまえにだけ特別なの!」
「・・・そうか、それならばいいんだ」

「もしやってるっていったら怒った?」
「そ、そんな訳ないだろう?」
「図星だろー?安心しろって、おまえ以外の女なんて目もくれないんだからさ。
おまえのほうこそ仕事先で浮気なんかすんなよ?」
「心配無用だ。私だってレオリオ以外の男なんて興味ないからな」

レオリオは気付いているだろうか。
何故自分が怪我をしても現場で処置を施さないで、そのまま帰ってくるか。

この大きな温かい手で、真っ白な包帯を巻いて欲しかったから。
いくら怪我をしても、この手で包み込んでくれるだけで
すぐに痛みなんかどこかへ吹き飛んでしまう。

「じゃあな、いってこい」
この真っ白な診察室で、レオリオは待っていてくれるから。

いくら遅くなっても、ドアを開ければ
「おかえり」笑って出迎えてくれる大切な人がいて
「ただいま」笑顔でそういえる自分。


目的を

復讐を果たした後に残るもの
帰る家
待っていてくれる人

皆無だった


だけど

「・・・いってきます」

滅多に帰れないこの家で

大好きな人が待っていてくれるから。

頑張れる。



ちょ、ちょっと危ない方向に萌えたお題ですが!!(ぇ
医者レオリオに看病される危なっかしいクラピカ。
BACK