毎日一緒にいられる。
新しい癖を見つけるたび、嬉しくなる。









冷蔵庫を開けると、いつも同じ場所に、同じものが入っている。
2個入りのシュークリーム。


コンビニで売っているごくごく普通の値段の普通のシュークリームだった。
中身はまろやかなカスタードクリーム。
しかしクラピカは密かにこのシュークリームが好きだった。


スイーツ専門店などのシュークリームではいけない。
どうも無駄なものが入っている気がする。
この安っぽい味と手軽に手に入るところがいいのだ。
安っぽい、といっても不味い訳ではない。
さくさくしているし、クリームも甘すぎない。
今時のコンビニ食品をなめてはいけない。



それを初めて買ってきたのはレオリオだった。
同棲を始めて3ヶ月のことだった。



「なあ、これ、食べる?」
買出しにいってきたレオリオがガサガサとビニール袋から取り出したのが、このシュークリーム。
ちょうど2個入ってたから、買ってきたという。


そもそもクラピカは滅多に間食もしないし、お菓子やケーキなどにあまり興味はなかった。
しかし嫌いというわけではなく、ただ単に食す機会がなかっただけだった。
生きていく為に、必要最低限の栄養さえとれればよかったから。


レオリオと暮らすようになって、食べ物の種類が格段に増えた。
レオリオの作る料理はバリエーション豊かで、どれもおいしかった。

スナック菓子やスイーツなど、食べたことがなかった。
しかしレオリオはこうして頻繁に買ってくる。
それが当たり前なのだと言う。


そして出会ったこのシュークリーム。
口には出さなかったが、とてもおいしかった。
なんだか癖になる味なのだ。


しかし自分で買ってくる気にはなれない。
というより、買おうとは思うがそのときになるとすっかり忘れてしまうのだ。

そして家に帰ってきて、「あっ」と思う。
せっかくコンビニに行ったのだから、買ってくればよかった、と。
だがわざわざもう一度行って買ってくるほど欲しいものでもない。

冷蔵庫を開けたときに、「買ってあったんだ」と見つけて少し嬉しくなる程度でよいのだ。




不思議なことに、それは続いた。
買った覚えはないのにそのシュークリームは冷蔵庫を開けると、同じ場所にあった。

そのたびに嬉しくなった。

クラピカではないのだから、買ってくるのはレオリオしかいない。
しかし毎回同じものを買ってくるとは。見たところレオリオ自身がこのシュークリームを好きというわけでもなさそうである。



気になり、レオリオ本人に聞いてみた。

「いや、なんかクラピカ、これ好きそうだったから・・・
同居人へのささやかなプレゼントだよ」


レオリオの、こういう優しさが好きだと思う。
一緒に生活している中でのレオリオのちょっとした心遣いや細かい配慮は、
クラピカの仕事中心のハードな生活を驚くほど快適で充実したものにしてくれる。
そのことに気付いたとき、なんとも言えない感情が胸にこみ上げてくる。

「やっぱおまえの喜ぶ顔、見てたいし」

照れると目をそらして、頭をかくレオリオの癖。
その後決まってクラピカを抱きよせて、小さな頭を撫でてくれる。


そのたびに思うのだ。
何気ないかわいい癖を見つけるたび。
自分はこんなにレオリオに愛されているのだと。



そしてそんな自分もレオリオを心底、愛しているのだと。



2008/08/26
家族だからわかる相手の好み。
二人は恋人同士ですが、すでに夫婦同然です。
相手がレオリオだから、こうしてつきあっていけるのです。
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