オレとクラピカの出会いは最悪だった。
のちに笑って語られる、一生忘れられぬ運命の出逢い。
放課後
採用試験を受け
大学を卒業し、
晴れてオレは教師となった。
桜が舞う季節、オレの新たな人生の門出。
新任式の前夜、ここを訪れた。明日からのオレの職場。
幼小中高大までの一貫教育、生徒数1000名を超えるマンモス校。
名門ハンター学園。
(明日からオレはこの学校の先生か〜・・・)
煙草をふかしながら、学校の周りを散策する。
なんたってでかい。
どこからどこまでが学校の敷地かすらわからない。
面接やミーティングなどで何度か訪れたが、念のため。
初日から迷って遅刻するわけにはいかない。
そうそう、ココは女生徒がカワイイらしい。
同じ教職の友人たちは羨ましがった。
「レオリオ先生〜!あの、ちょっとぉ、わかんないとこがあるんですけど・・・」
「そうかそうか、じゃあ放課後オレの部屋に・・・」
「はいわかりましたv」
なんて
ことにもなりうるこの職業。
くぅー、男の夢だろ。
腕時計は夜11時をさしていた。
くだらない妄想に浸りながら一通り歩き回り、帰ろうとしたときだった。
校門の前に一人の女性。
暗闇に金色の髪が映えていた。
綺麗で繊細な、美しい顔立ちだったが、どう見ても16、7歳にしか見えない。
そこでオレは声をかけた。
「おいコラおまえ、こんな時間に学校に何の用だ。
女の子が一人で危ねえだろ」
「・・・なんだ貴様は」
「オレ?オレは明日からこの学校の教師になるレオリオだ。
とりあえず教師だからな、生徒の深夜徘徊は見逃せねーぜ」
「・・・キミは失礼極まりないな」
「は?なんだコラ、その口の聞き方は」
「・・・自己紹介するよ。私も明日からこの学校の教師になるクラピカだ。
――よろしく、同期のレオリオ先生」
・・・
そして
1年が過ぎた。
あっという間だった。
「レオリオ先生〜!」
「おう、どーしたポンズ」
「あの、ちょっとぉ、この前のテストでどうしてもわかんないとこがあって・・・」
「ほお〜う、どれどれ?」
そうそう、ココの女子制服は超カワイイ。
チェックのミニスカートにオシャレなブラウス。
オレの好みw
休み時間になると同時にオレに駆け寄ってきたポンズはくるんとした髪型がかわいくて、なによりさり気なく巨乳。
廊下の端により、彼女に近づこうとしたときだった。
後ろから分厚い辞書で背中をバシッと強打される。
「校内で堂々とセクハラか」
「・・・いってぇ」
振り向くとそこには予想通りの彼女の姿。
サラサラの短い金髪を靡かせて仁王立ちしているクラピカだった。
今日は黒のすらっとしたパンツに薄手のパリッとしたブラウス姿。
いつもどおり、まったく隙が無くておまけに色気もない。
片手には先ほど凶器と化した英語の辞書、もう片手には数冊の教科書。
「クラピカ先生ー、オレは校内暴力反対派です」
「そこの君、このスケベ理系教師に質問するなど無駄だよ。
聞くなら私にしたまえ。私は英語教師だが理系にも・・・」
「はーい黙って」
「!!(ムグムグ)」
「ごめんねポンズちゃーん。明日職員室来てよ。お茶でも飲みながらゆっくり話そうねー♪」
「はあーい」
ペラペラと喋り捲る彼女の口を片手で塞ぎポンズにそう言い、階段を下りた。
その先には生物準備室。
レオリオは片手にクラピカを抱えたまま鍵をあけて中に入る。
夏でもひんやりしたこの独特の空気は学生の頃から好きだった。
「〜いい加減に離せ!!」
「おっと」
クラピカは必死の思いでレオリオの腕から逃れる。
「どういうつもりだこの変態教師」
「なに怒ってんの」
「怒るのは当たり前だ」
「オレがかわいこちゃんと仲良くしてたからやきもちやいちゃったんですか」
「!!」
「図星ー」
「ち、ちが・・・離せ!殺すぞ!」
「物騒だなあ」
「・・・!ん・・・っ」
こんなに力がある女には初めて出会う。
おかげで大人しくさせるのに苦労した。追い詰めた先は大きな本棚。
唇を塞いだ拍子に何冊か床に落ちた。
「・・・かわいいな、おまえ」
「・・・うるさい」
出会いは最悪だった。
しかし翌日職員室で再会し、皮肉にも机は隣同士だった。
そして1年が過ぎ、こうして恋人同士になった。
気の迷いではない。本気だぜ、オレは。
「もう授業が始まる。どいてくれ」
「続きは?」
「しない!」
「えー」
「おまえも次は授業だろう早く行け!」
「もう来てます」
ここは生物準備室。
次は2年生の実験授業で、既に集合はかけてある。
「・・・」
「さみしいなあー、・・・ちなみに今日は?」
レオリオはネクタイをしめながら足早に出て行くクラピカを呼び止める。
彼女はドアの前でピタッと止まり、ポケットから鍵を出してレオリオに投げると、振り向くことなく去っていった。
「やれやれ、とんだじゃじゃ馬だな」
愛しい彼女の部屋の鍵。
今日はオレの方が早く終わるから、先に行って待っていよう。
大人の甘い甘い放課後はこれから。
彼女の英語の発音に酔いしれる男子生徒も多いようだが、それがどうした?
今夜もベッドの中で、オレだけが聞けるかわいい声で甘えてくれるに違いない。
2009/03/28
レオクラが教師だったらという妄想。じつは連載にしようと思いましたが断念。
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