瞳
朝目が覚めると左側に金色の髪がある。
白いシーツに広がる綺麗な金髪。
大きな目をパチパチと瞬かせて、オレにおはようと微笑む。
深緑を思わせる淡い瞳の色。綺麗だ。
その向こうに鮮やかな緋色が見れるのは、きっとオレだけだ。
クラピカはオレの瞳が好きだという。
私なんかよりも、何倍も綺麗で美しいという。
ダブルベッドでも、オレがほとんど陣取ってしまっているからクラピカは狭そうだ。
でも、距離がなくなるからそれはそれでいい。
こうやっていつまでも見つめあえる。
クラピカは必ずオレより先に起きている。
でもベッドからは出ずに、身体も起こさず、ずっとオレを見ているのだという。
だっておまえ、朝は苦手だろ?
この問いに、クラピカは答えてくれない。
枕に頬をなすりつけて、細い指でシーツをキュッと掴むクラピカの表情が好きだ。
隙だらけで
とろけそうな瞳でオレを見つめて
少しだけ口元が緩んでいて
仔猫のようにオレの名前を愛しげに呼んで
静かな息遣いさえも艶かしい。
仕草だけじゃない。
華奢な身体には大きすぎる――オレのワイシャツの裾からのぞく白い太腿
決して豊満ではないけれど形のいい綺麗な胸が、止めていないボタンの間から露になって、目が離せない。
オレがクラピカを思うがままにしているつもりだった
でもその逆だった
オレはもうコイツに逆らえない
オレの理性はコイツの手中にある
もうどうにもならない。
オレがリードしているつもりだった
でもそんなことはなかった
男は女がいないとなにもできない
オレはクラピカがいないとなにもできない。
まるで子供だ。
朝っぱらからクラピカはワインを欲しがった。
休みだからいいじゃないか。
そう言わんばかりに。
みるみるうちにクラピカの頬は薄いピンク色に染まっていった。
もともとアルコールは体質的に得意ではないのだ。
今日は外に出たくない。
おまえとずっとここにいたい。
着替えようと思って立ち上がったオレの腰に腕を巻きつけて、甘えた声でオレになすりつく。
こんなのあのクラピカじゃない。そう思いたい。
でも正真正銘、オレの好きなクラピカだ。
もしかしたらクルタ族には発情期があるのかもしれない。
そんなくだらないことしか思い浮かばない。
男らしくなく、動揺している。
こんなに積極的な女は初めてだ。
クラピカは普段そっけない分、酔っ払うととことん甘えてくる。
――今回、それを知った。
クラピカに完璧に支配されてる。
心も身体も。
それは喜ばしいことなのか。
襟を両手で引っ張られて、顔がぐっと近くなる。
「私のこと・・・・好きか?」
燃えるような緋色の瞳。
オレだけのもの。
答える代わりにそっとキスをした。
自然に唇が離れて、目が合う。
クラピカは嬉しそうに微笑んで、自分からキスをしてきた。
オレは驚いた。自分から舌を絡ませてくる。
心拍数がきっと大変なことになっている。
――もちろん、オレの方だ。
そのままベッドに倒れこんだ。
クラピカはオレの上にまたがって、ところかまわずキスをしてくる。
――いつもオレがしているように。
「ちょ・・・・待てって、おい・・・」
思わず上体を起こして、焦りを隠せずにクラピカを止めた。
その言葉さえもキスで遮られた。
「・・・いやだ。待たない」
単純すぎるクラピカの答え。
素直だといった方がいいかもしれない。
そのキスの嵐が下半身に来た時は、もうどうなってもいいと
心底そう思った。
抱かれる方の”女”は
いつもこんな気持ちなんだろうか。
だとしたらオレは女になってもいい。
こんな瞳で見つめられたら
もう逃げられない。
果たしてオレの体力は
・・・いつまで持つだろう。
2006/07/20
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