笑ってくれれば嬉しいに決まってる。
その大きな瞳に涙を浮かべれば、こっちも泣きたくなる。
寂しそうな顔をしてたら、痛いほど強く抱きしめてやる。
――たとえ何処にいても。
指先
その一瞬の表情を捉えられるようになるのに、そう時間はかからなかった。
オレはおまえが好きだから、おまえしか見えないから、
わずかな表情の変化もすぐわかる。
今は、笑ってくれている。
機嫌も良さそうだから、今、チャンスだったりするか?
でも、オレが少し口を滑らせるとすぐへそ曲げるもんだから、結構大変なんだよなぁ。
そんなことを思いながら、クラピカを更に強く抱きしめた。
そして、改めて小さな幸せと喜びをかみ締める。
こうやって、触れているだけでも幸せだって実感できるのは、スゴイことだ。
好きだから、もっと触れ合いたい。
感じたい。
溺れたい。
これは、人間の――男のサガだよな?
「・・・・レオリオ、手つきが怪しいのだよ」
「やっぱわかる?」
オレは華奢で狭い背中にそっと腕を回して、
ごく自然に服の上から下着のホックを外せた・・・と思ったのに。
この手の器用さは少し自慢だったのだけれど。
よく考えてみれば、人一倍敏感なクラピカにそんな姑息な手は通用しない。
「今何時だと思ってる」
「午後3時。丁度おやつの時間だな」
「そんな早くからおまえは何を・・・!」
だんだんクラピカの口調が激しくなってくる。
「なにって・・・・イイこと」
オレのこの手が一向に手を止めようとしないから。
予想通り、クラピカは顔を赤くして抵抗する。
さっきまであんなに素直だったのに。
まぁ、そんな頑固なところも、可愛くてオレは好きだけど。
そんなことを言っていられるのも――
今だけだって
知ってるくせに。
それでも、オレが一回なだめるように優しくキスすると、すぐに大人しくなった。
「・・・・・・・反則だ」
「何とでも言いなさい」
それでも、一応聞いてみた。
後になって、いろいろうるさいから。
「・・・いい?」
抱きしめたまま、耳元で優しく囁くように。
クラピカはこれに弱い。こうするだけで、すぐにおとなしくなる。
もちろんそれを知るのはオレだけで。
もしオレ以外の野郎が知ってたら、大変なことだ。
「・・・聞かなくても分かってるくせに・・・・」
――卑怯だ
クラピカは
はにかみながらそう言った。
クラピカが笑ってくれると嬉しくて、もっともっと幸せにしてやりたい。そう思う。
そんなの奇麗事だと人は言うけれど。
「・・・っ、ソファ・・・やだ」
目の前のソファに静かに押し倒そうとするオレの腕を、クラピカは阻止する。
そういえば、この間ソファでやったら、狭い中で激しく動いたものだから、
全身筋肉痛になったと不満そうに訴えていたクラピカを思い出す。
そういうことなら、仕方が無い。
だったら後は、ベッドしかないだろう。
少し火照って赤く染まったいつもは白い耳朶を、口に含む程度に甘く噛んで、背筋を指でゆっくりなぞる。
するとクラピカは微かに肩をすくませて、小さく声を上げる。
恥かしくてたまらない。
そう言いたげに、真っ赤な顔を隠すようにオレの胸に頬をこすりつけてくる。
ふわりと香るシャンプーの匂いや、柔らかくて心地良い感触。
昂った感情を必死に抑えて――
クラピカの細い体を抱き上げる。そう、定番の「お姫様抱っこ」で。
「じ、自分で歩ける」
「遠慮すんなって」
抱き上げた彼女の柔らかい肌、甘い匂い。
上目遣いにオレを見つめるその瞳も、薄く開いた桜色の唇も
全てが愛しい。
こんなに好きで、
こんなに大切で、
こんなにも愛してる。
どうしたら、この気持ちにケリがつくのか。
今のオレを「理性」なんてもので止められるなら、止めて欲しい。
クラピカを壊してしまいそうで、怖い。
ベッドの上で軽い愛撫を繰り返し、
頬に、額に、首筋に、唇に――乱れた服の間からかいま見る、
まるでマシュマロのような肌に所構わずキスをするオレに、
クラピカはくすぐったそうに微笑いながら身をよじる。
そうやって動くたびに揺れるイヤリングや、白いシーツの上に広がる金色の細い髪。
それが――たまらなくそそられることを、コイツは知っててやっているのか。
まさか、オレを誘ってるのか。
きっと、本人にそんなつもりは微塵も無いだろう。
クラピカは男の誘い方なんて知らない。
それでも、オレには充分過ぎるくらい感じさせてくれるから。
素直に、感じたまま応えているのだろうから。
―――本当に、いじらしい。
全部・・・・おまえのせいだからな?
おまえが可愛すぎるから。
そんなにもオレを欲しそうな瞳をしているから。
「・・・・っも・・・やだ・・・・」
「”やだ”・・・じゃねーだろ?」
ここまできて、嫌なんて言わせない。
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