君がいちばん欲しいものはなに?









ベッド、本棚、洗濯機。
それと小さい冷蔵庫と四角いテーブル。

レオリオはいつも思う。
「おまえさ・・・もうちょっとかわいい部屋にしようとか・・・思わねえ?」
クラピカの住むマンションに来るたびに、レオリオは決まり文句のように言う。


「どういうことだ?」
「だってよ、ほんっとに生活必需品しかねーんだもんおまえの部屋・・・」
「生活に不便はないが?」
「せめて花の一本でも飾っとくとか・・・」
「仕事で帰ってこない日のほうが多い。私にはこれで充分だよ」


それは
そうなのだが。



「なあクラピカ」
「なんだ」

「おまえ、もうちょっと贅沢になったほうがいいぜ」

ギシギシと音を立てるベッドに腰掛けて、レオリオは呟いた。
クラピカはコーヒーをいれる手を止めて、彼の方へ振り向く。


「もっといろんなもの、欲しがれよ」


コイツに足りないのは
欲だ。


「そんなに無欲だと・・・幸せも逃がしちまうぞ」

そんなレオリオを尻目に、クラピカは笑ってこう言う。

「私はもう充分幸せだよ」
なんでそんなクラピカがこんなにも愛しいのか。

「おまえがいてくれれば」



クラピカは微笑んで、レオリオの隣に腰掛けた。
――少しだけ、間を開けて。


「・・・ったく、不意打ちでそういうこと言うんじゃねーよ」
ぶっきらぼうに呟いて、片手で自分の真っ赤な顔を覆った。


かわいいな、おまえは。
なんて言ったら、レオリオはやはり怒るだろうか。


「私にはレオリオがいてくれればそれで充分。
おまえの心も体も、全部私が独占していたいのだよ」

その言葉に、ふと目が合う。
レオリオは観念したように笑って、そのままクラピカを抱きしめた。


その照れ臭そうな笑顔も
温かい腕も、貴方の全てを愛してる。

私はもう貴方の虜。



2008/07/24
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