見えるところにも
見えないところにも
どうしても、「証」をつけたかった。共有できる何かが欲しかった。
離れていても、ずっと近くに想えるように。









久しぶりに抱きしめたクラピカは、少しだけ痩せていた。

仕事が忙しいからって
ちゃんと食べてんのか?無理してないか?
そう問うレオリオに、「大丈夫」と。
その笑顔は変わっていなかった。


壁際に追い詰めて、奪うようにキスをする。
クラピカは突然の事態に苦しそうに声を漏らしたけれど
流れに任せて隣のベッドに、出来るだけ優しく押し倒した。

――変わらない。この瞬間のこの瞳の色だけは。
小さな手を握り締めて、もう一度口付けて。
角度を変えて――何度も何度も。

キスが激しさを増すたびに、クラピカは身じろぎした。それをレオリオが許さない。
いつもよりキスが長いことに――
クラピカは気付いているだろうか。

いつもより強引な彼に――
クラピカは何を感じるだろう。

恐怖?
嫌悪?

――愛情?


「・・・・あ・・っ、やだ・・も・・はなして・・・っ」
甘い声で抵抗する唇を再度奪って、そのまま首筋へと舌を這わせる。
「・・レオリオ・・・・・い・・・加減に・・・っ・・・」
拒み続ける言葉とは裏腹に、的を突いた優しい愛撫に体は素直に快感を訴える。

それが悔しかった。
「・・・・!ちょ・・・っ、や・・・」

首筋の白く薄い肌を、唇で強く吸われる。
「あ・・・っ」
その刺激がたまらなくて声が我慢できなくなる。

それでも、心の中は。
「・・・・あ・・あれほど・・・つけるな・・っ・・て・・・」
――言ったのに。

「・・・この・・・っ」
約束を守ってくれなかった、目の前の彼の短い髪を、空いている左手で強く引っ張った。

「・・・・・いってぇ」
「・・・ばかっ、うそつき・・・・っ」


こんなものを人に見られたら
まともに仕事なんて出来ないから。首筋にキスマークは、ご法度だった。

「・・・オレの・・・」
「・・・え?」
「オレの女だって”証”・・・どうしてもつけたかったんだよ」

切なそうに目を細めてその瞳に全てを見透かされた気がした。
「誰にも・・・渡さねぇ」



指を絡ませて
もう一度深く口付けられた。

甘い吐息。長い指。広い背中。

クラピカが小さく声を上げるたびに
キスマークは増えていった。





「・・・・信じられない」
首筋。脇腹。乳房。太腿。いたるところに、彼が残した赤い痕。

「ばか・・・・・つけないでって・・・あれほど言ったのに・・・」
恨めしそうにレオリオを見上げるクラピカ。
毛布一枚羽織ったそんな可愛い格好で睨まれたって、微笑ましいだけ。

頭をかいて、謝って。こんな提案をした。
「じゃあさ・・・オレにもつけろよ。いくらでもさ」

「な・・・っ」
本当は――それが狙いだったのかもしれない。

「いいだろ?」
優しく抱きしめられて、また鼓動が高鳴った。丁度鎖骨の上の辺り。
遠慮がちに舌で触れて、唇を押し当てた。

「・・・一個だけ?」

本当についてしまった。自分と同じような、赤い痕。
「・・あ、あたりまえだっ」
「わかった。ありがとな」

ギシギシとベッドが揺れる音が部屋に響いた。

朝がくるまでずっとこのまま。お互いを抱きしめて、ゆっくり眠ろう。
夢の中でも君に会えるように。



キスマークって、つけられると嬉しい。
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