レオリオに抱かれているときいつも思う。
いったい何人の女が
こうしてレオリオに抱かれたのだろう。
この優しい瞳で見つめられて
甘くて低い声で名前を囁かれて
それを考えると
なんだかもやもやする。
寝癖
私の誕生日は4月。もう十分に春を感じられる。
しかしレオリオの誕生日は3月。
――このとおり、まだまだ寒い。
雪まで降っている。
「あーあ、なんで雪降るかなー」
3月3日の朝、カーテンの隙間から見えたのは雪景色だった。
私はまだ、起きられない。
寒いし、だるい。
隣のレオリオは上半身だけ起こして、恨めしそうに外を眺めていた。
短い黒髪には、寝癖がついていた。
寝顔だったり
寝言だったり
寝癖だったり
レオリオのこういう些細なことに気付けた女は
どれくらいいるのか。
「おいおいクラピカー、寝癖すっげぇ」
毛布にくるまってもぞもぞしている私の髪の毛を、大きな手がくしゃりとかきあげた。
困ったような照れたような微妙なその笑顔がとてもとても好きだった。
そして大きな手のぬくもりを感じられることも、幸せで仕方なかった。
「・・・うるさい。おまえだって人の事を言えまい」
「うそっイケメンが台無しじゃねえか」
まだ薄暗い部屋の中で、私たちはくすくす笑った。
1年に1回の誕生日。
その日だけは自分がなによりも特別に扱われるような気がする。
どんなわがままを言っても、許されるような気がする。
レオリオは私にこんなことを要求してきた。
今日一日、オレを好きにしてくれよ。と。
意味が分からなかった。
普通逆だろう。
私は雪が嫌いではない。
故郷にはよく雪が降った。
意味も無く身長よりも大きな雪玉を作ったりした思い出がある。
家族と友人とともに。
この寒い中、外に出て同じようなことをしようとレオリオを誘った。
昼過ぎ空腹に耐えられず部屋へ戻る。
次は料理をしてほしいと頼む。
レオリオは喜んでエプロンを身に着けた。
しかしその間私は退屈だった。
結局二人でキッチンに立つことになった。
いつもと変わらない。
普段は甘いものなど口にしない。
ほしいともあまり思わない。
誕生日にケーキを食べるという風習も私は知らなかった。
それを知り、ケーキが食べたいと言ってみた。
雪はしんしんと降り続けていた。
コートにマフラー、いつか必要になるだろうと思い購入しておいた「雪の日」用のグッズ数々。
まるでスキーに行くようないでたちで、雪をかきわけながら街へ出た。
手を繋いで、ゆっくりと歩いた。
大きなホールケーキを買い、再び部屋へ戻る。
3月4日になるまであと3時間。
ベッドの中で、レオリオはなにもしなかった。
おまえの好きなようにしろ、という言葉を思い出し
レオリオに寄り添って、腕を絡ませた。
そしていつの間にか朝になっていた。
年に1回しかない特別な日、誕生日。
振り返ってみると、日常となんら変わらない1日だった。
しかしレオリオはそれでいいのだという。
昨日も今日も明日も、クラピカが隣にいればなんでもいいや、と。
眠りにつく直前、小さく誕生日おめでとうと呟いた。
レオリオは小さく笑って私の頭を撫でた。
先日の自分が恥かしい。
レオリオの過去の女に嫉妬していた。
どうでもよくなった。
今の彼は私を愛してくれている。
そんなことにも気付けなかった。
昨日も今日も明日も、変わらない。この大きな手の温もり。
2009/03/03 Happy Birthday Leorio.
今年は間に合いましたレオ誕。年々ネタがなくなります。
ふたりのゆるい日常。幸せです。
BACK