ねえ、レオリオって、上手いの?
あいのしるし
私が言うのもなんだが、レオリオはモテるほうだと思う。
モテるといっても、バレンタインには大量のチョコをもらったり、休み時間のたびに裏庭に呼び出されたり・・・というのではなくて。
少なくとも不細工ではない。
鼻もすらりと高い。ぱっと見、怖そうに見えるのだが近くで見るとかわいい瞳をしているのだ。
顔のパーツすべてが完璧なバランスで、なによりも小顔。小顔というのはかなりポイントが高いらしい。
短く黒い髪もよく似合っている。
普段は制服に包まれている体。
ほどよくしなやかな筋肉がついていて、とてもたくましい。
もっとも、彼は着やせするタイプなのだ。
首も手も男らしい。
背も高いし、足も長い。顔とのバランスもとれている。
正直、そこらのモデルよりもスタイルはいいと思う。
私が思うに
彼はとてもセクシーだと思う。
なんだか無駄な色気をむやみやたらに撒き散らしている。
それはムンムンとした男臭いものではなく、
彼の愛用の香水とともにふわりと鼻をくすぐる甘い色気。
実際の年齢よりもかなり老けて見えるのは少々マイナス。
だがそれはオトナっぽいというプラス要素にもなる。
だがとても短気でよくケンカをする。
・・・スケベだというのは否めないし、年上に対しても気後れしない。
オヤジっぽいところもあるし、軽薄でもある。
しかし不思議とこざっぱりとしている。不潔な印象がまったくない。
爽やかでも、潔癖というわけでもない。こざっぱりとしているのだ。
いいところも悪いところも
すべてがベストなバランスなのだ。
そんな彼と
私は頻繁に寝ている。
私がレオリオと付き合っているのはみんな知っている。
私としては、できればそんなに公にしたくは無かった。
いらぬやっかみや冷やかしを受けると思っていたから。そういうのは得意ではない。
しかし。
校内で堂々と私の肩を抱いて歩いたり、あいつに手をだすなよなどと言いまわったり・・・。
「ねえクラピカ」
「・・・?」
中庭の端のベンチで読書をするのが私の休み時間の過ごし方だった。
めったに人が来ないし、静かだし。
ここで私に声をかけてきたのは彼女たちが初めてだった。
「ごめんね、ちょっちいいかな」
「ああ、なんだ?」
二人のクラスメイトだった。
いつでも行動を共にする、というわけではないが、私の数少ない友達だった。
二人は私の両脇にぴったり座り、改まった顔でこう聞いてきた。
「ねえ、レオリオって、上手いのかな?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
私の思う限り、字は上手くはない。
絵も下手だし
・・・ああ、運動全般はなんでもこなすな。
勉学の方はからきしだが。
あとは・・・
必死に考えて黙っていると、もう一人が煮え切らない様子でさっきよりも大きな声を出した。
「もう!決まってるじゃない、エッチが上手いのかって聞いてるの!」
「!!!!・・・・ななな、な・・・」
”な”を繰り返すしか余裕がなく、右から左から交互に質問攻め。
「相当なテクニシャンだって聞いたの」
「たしかになんか彼ってそういうオーラあるもんね」
「ちょっと気になって・・・」
確かに気になるお年頃である。
自分たちの周りがどんなふうにしているのか、すごく気になる。
「あたしも彼はいるんだけどさー・・・ねえ?」
「そうそう・・・ぶっちゃけ良くないの」
彼女たちは冷やかしでも嫌がらせでもなく、真剣らしい。
クラピカは必死に頭を回転させる。
そういえば自分は、彼女たちのような悩みをもったことなどない。
そりゃあ最初は・・・初めてのときは少なからず痛かった。
でも彼はゆっくりと時間をかけてくれたし、なによりとても優しかった。
キスも・・・そうだ。
やさしかったり激しかったり
緩急をつけるのがとてもうまいと思った。
気持ちよくなかったことなんて1回もなかった。
おまえが人一倍感じやすいから、なんて言われたけれど、そんなことわからない。
セックスについて不満を持ったことはない。避妊も積極的にしてくれる。
事後もやさしく頭を撫でてくれる。若さ故の多少の失敗はあっても、それを彼は優しさでカバーしてくれた。
まだ付き合って1年あまり、経験が乏しいからかもしれないが、とにかく現時点での特出すべき不満などなかった。
「・・・・うまいかどうかはわからないが・・・その・・・」
「うんうん」
「・・・不満は・・・ない・・・のだよ」
二人は例えようのないリアクションをして、私は口ごもった。
放課後。
今日はレオリオのバイトがない日。
なので一緒に帰る日。
クラスは別々なので、いつもレオリオが私のクラスに迎えに来てくれる。
あれ以来、脈拍数がおかしい。
顔のほてりもとれない。
授業にも集中できなかった。
他人にあんなことを話すのは初めてで
なんだかレオリオと顔を合わすのが妙に恥かしい。
「おーいクラピカぁー」
心臓がはねあがる。体も同時に跳ね上がる。
周りの生徒たちはそんな挙動不審な私をみて唖然とする。
「なにやってんの?帰ろうぜ」
「・・・・・ああ」
「・・・!ちょっとこっち向け」
大きな手にぐいっと頬を持ち上げられる。
体内のものすべて外に出てしまいそうだった。
「顔赤いじゃん・・・風邪?」
「ちがう」
「だといいけど・・・気をつけろよ」
ホッとしたように息をついて、大きな手は私の髪をくしゃくしゃに撫でた。
レオリオが上手いかどうかは私にはわからない。
でも彼はちゃんと私を愛してくれている。
優しさを体で伝えてくれている。
2009/09/23
・・・この話で、私がいかにレオリオを好きかお分かりいただけたと思います。
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