チャンネルの主導権
「ん・・・・ん〜?」
いつも起きるのは6時前。
しかし今朝は目を覚ますと、起き上がってテレビを見ているクラピカの姿が目に入った。
「おま・・・なんでこんな早くに起きてんの・・・」
いつもは起こしても起きない。
オレが支度を整えて、やーっと起きる。
「昨日早く寝すぎたのだよ」
「・・・なるほど」
昨晩オレが帰宅したときには、クラピカは既に眠っていた。
昼間に何があったかは知らないが、よほど疲れていたのだと思う。
寝顔だけはかわいい。・・・ふだんもちょっとかわいい。
その寝顔を眺めながら一人夕食をとったのだった。
「んじゃあおまえも朝メシ作るの手伝えよなー。いつもオレばっか・・・
って、なんで8チャンじゃないんだよコラ」
起きるのは6時前、そしてテレビをつけるのが6時丁度。
朝は必ず8チャンネル。だいたい毎日同じ時間帯に同じコーナーをやるから忙しい朝もリズムがとりやすい。
この時間にクラピカが起きたことはなかったから今までもめることなどなかった。
「私はこっちの方がいいぞ」
「朝っぱらから人のリズムを崩すなー!」
「放送内容は一緒ではないか、どこの局でも変わらないのだよ」
「ダメだー!オレは6時半ぴったりにやる天気予報を見なきゃダメなんだよ!」
「なぜだ」
「予報士のアニーちゃんのかわいい笑顔を見るために決まって・・・」
「なに?」
「はっ」
「なんだか気分が悪いのだよ!女目当てだったとはこの変態が!」
「変態とはなんだよ!だいたいおまえがガラにもなく早起きするからだろ!子どもは昼まで寝てろ!」
「昼まで寝たら遅刻するのだよ〜!!」
「いーからリモコンよこせ!」
「い〜や〜だ〜!!」
こんな狭い部屋であんなに激しい攻防を繰り広げたら
「・・・うわ・・っ」
こうなることは決まっている。
まったくなぜ学習しないのか。
「・・・」
「・・・」
文字通り、押し倒してしまった。
さっきまでの勢いはどこへやら、二人とも言葉に詰まる。
さっさとどけばいいものの
情けないことに足がつりそうで動けない。
気のせいか
クラピカの顔が少し赤いのは。
「・・・今日は諦めるのだよ」
「は?」
「明日は4チャンを見るのだよ」
「・・・」
かわいいのは寝顔だけだと思っていた。
こういうのも
かわいいと思った。
2009/11/15
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