「早く見つけてあげなきゃ!仲間たちの眼」

ゴンの澄み切った瞳に見つめられて、なんだかすべてから解放されたような気がした。

「よかったね!蜘蛛が死んで、やりたいことに集中できるね」
「・・・ああ」
「もし、俺達にできることがあ」

ゴンの言葉は、キルアの顔面アイスクリーム攻撃によって阻止された。
そこからお決まりの喧嘩が始まる。
その光景を、なんだか何年も前に見たような気持ちになる。不思議だった。

ふと、携帯が鳴る。
耳に当てると、聞こえてきたのは、誰よりも安心する、聞きなれた声だった。

「誰だ」
「・・・・、・・・レオリオ・・・」

目頭が熱くなる。
ゆっくり顔を上げると、ゴンとキルアの少し先に、レオリオが立っていた。
相変わらずの小奇麗なスーツ姿に、トレードマークのサングラス。
見つめるのが少し照れくさいくらいに、格好良く見えた。

深いこげ茶色の瞳は、クラピカをまっすぐ見つめていた。
それだけで胸が張り裂けそうになる。嬉しかった。

――また会えた。それだけで十分幸せだと思った。




デイロードパーク




昼下がりのデイロード公園。
先ほどからアイスクリームまみれになって喧嘩を続けている二人を、
レオリオとクラピカは二人並んで見つめていた。

レオリオは木製ベンチの背もたれに大きくよりかかり、長い腕は隣のクラピカを抱き寄せていた。
――わからないように。

まだゴンとキルアの喧嘩は終わらない。喧嘩というより犬のじゃれあいにしか見えない。
こうして互いに言葉を交わすことなく、二人とその周りの景色をただ見つめている。もう10分は経っただろうか。

クラピカは目線だけを上にして、レオリオを見た。
その視線に彼は気づかない。

「なんだ、その間の抜けた顔は」

思わずそう言ってしまうくらい、レオリオは上の空でぼうっとしていた。
クラピカの指摘に、特に反応することもなく、レオリオは空を仰いでこう言った。

「いやー・・・平和だなあって」

澄み切った青い空は、どこまでも続いている。
あたりを見渡せば、高層ビルが遠くに見えるものの、公園内は緑でいっぱいだ。
周りにはまるで時間が止まったように散歩をしている老夫婦に子ども連れ。
そして少し離れたところで、じゃれ合う子供たち。

「どっからどーみても、俺達4人家族だぜ」

レオリオは気の抜けた顔のまま、それでも嬉しそうにつぶやいた。

「あー、平和だなー。天気はいいし時間の流れはゆっくりだし、隣にはクラピカがいるしなァ」

レオリオは体を起こして、クラピカを見つめた。
こうして間近で顔を見るのは、久しぶりな気がしてなんだか気恥ずかしい。
クラピカは無意識に顔をそむけて、照れ隠しのように言う。
「な、なら私は母親か?」
「そーだなァ、ゴンとキルアが兄弟で、おまえがねーちゃんで俺だけパパっておかしいだろ」
「ふふ、確かに」

言われてみれば、確かに平和だ。
なんなのだろう、この平穏は。本当に時間が止まっているようだ。
つい昨日までの混沌とした日々が、まるで夢のようだ――。

そのことを頭の片隅に置いておく。
もちろん終わったわけではない。
けれど今だけは。今だけは、この幸せに浸らせてほしい。

「このまま家族になっちまうか?」

口調は冗談めいていたのに、クラピカを見つめるまなざしは真剣だった。
一瞬の沈黙。絡め取られた視線を、外すことはできなかった。

沈黙をやぶったのはレオリオだった。
クラピカが何も言えなくなるのをわかっていたように、ふっと笑う。
「でも俺、19歳で12歳の子持ちか?さすがになぁ」
「無理があるな。・・・、なんだ?」

さきほどとは違う角度で、じっと見つめられる。・・・近い。
嫌なわけじゃないが、どう反応していいかわからない。

「やっぱそっちの色の方がいいよ」
「なにが・・・」
「おまえに黒のカラコンは似合わねえって」

その言葉に、理由はわからないが涙が溢れそうになる。
思わず息を小さく止めて、自分を落ち着かせた。

「濃い緑と薄い青がまじったような、きれいな色だからな」

おまえがそう言うのなら、私は私でいたい。
それでも必要な時が来たら、私はまた自分を偽るのだろう。
それを何度も、許してくれるだろうか。離れていってしまわないだろうか。
不安で仕方がない。だからこの幸せがひどくもろく感じる。

「・・・レオリオ」

発した声は、クラピカ自身も驚くほど震えていた。
レオリオは黙って続きを促す。

「おまえの瞳の色も、やさしくて私は好きだ」

好きだ。
この気持ちに偽りはないけれど、自信はもてない。
それでもレオリオは照れ臭そうに、笑顔を見せた。



デイロードパークのころの二人は、自分の気持ちに気付いていながらもお互いには伝えていないし、
もちろん一線も越えてない関係かなと思います。
それにしても1999年アニメのレオクラは、何度見てもレオクラです。
このシーンのレオリオのかっこよさとクラピカの美人さと言ったら!もう!みんなもう一回見て!!

2014/03/28

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