ふたり暮らし



この部屋だけは、現実から隔離されている気がする。
仕事から帰ってきて、玄関のドアを開けると世界が変わる。明るいし、空気が違う。
キッチンの方から美味しそうな匂いがこちらの方まで充満している。ようは、あたたかいんだ。
レオリオがいるかどうかは、これでわかる。
静かにドアを閉めてキッチンに向かうと、予想通りレオリオがエプロンをつけて、鼻歌を歌いながら包丁を使っている。
いつも通りの光景にほっとした。

「ただいま」
後ろから声をかけると、レオリオはびくっと肩を震わせて大げさに驚いた。
「おわっ!おま、気配消してくんなよ!びっくりした・・・」
そのあと、優しく笑って「おかえり」と言ってくれた。

「今日は早かったな」
「まあな。家族サービスっての?」
医者として働くレオリオは、私なんかよりもずっと忙しい。でもこうして、時間を作ってくれている。
「メシもうできるからよ。風呂もオッケー。あ、先にオレにしとく?」
レオリオは手際よく作業を終わらせて、楽しそうにそう言った。

「そう急がずとも、順番にこなせばいいだろう」

明日は休みなんだから。そう付け加えて、レオリオの手に触れた。
ゆっくりゆっくり、二人で過ごそう。





(2011 拍手御礼文)
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