必然と偶然
お互い隣にいることが当たり前になっていた。
ゴンとキルアはいつも一緒だし、必然といえばそうかもしれない。
居心地は、悪くなかった。ただ今回は勝手が違う。お互いを狩らなければならない可能性だってゼロじゃない。
二人の距離は、いつもより少しだけ離れていた。ゼビル島までの約2時間。船上で、クラピカが口を開いた。
「・・・戦いはすでに始まっている」
「ああ・・・みんな自分のプレートは外して、懐に仕舞い込みやがったもんなァ」
のらりくらりと受け答えて、片目を開いてふと左隣に目をやる。
少し視線を落とすと目に入る金髪の小さな頭。伏せられたまつ毛は、頬に影を落とすほどに長い。
この角度から見るクラピカは、すでに見慣れていた。出来ることなら試験が終わるまで、この立ち位置を離れたくはない。
言うなら今しかない。自分に言い聞かせる意味で。
「もしも・・・もしもだ」
語尾は淀んで、彼らしくなくどもっている。クラピカは黙って耳を澄ませている。
「俺のターゲットがおまえだったら・・・俺は容赦なくおまえを狩るぜ」
本音だし嘘でもある。要はどうしたらいいかわからない。クラピカの反応を待った。
「当然だ」
予想はしていたがきっぱりと即答。いつもと変わらない表情で、迷いもない。少しでもためらった俺が馬鹿みてぇじゃないか?
「私のターゲットがおまえなら、私も同じことを言う」
「お、おまえのターゲットは俺なのか!?」
彼のオーバーリアクションはクラピカも見慣れている。ただ今回は、大げさではなく本当にあせっているように見えた。
からかうのはよくないな。私だって、おまえと戦いたくなんてない。クラピカは小さく笑って彼の方に目をやった。
「安心しろ。私のターゲットはおまえじゃない」
「そ・・・そうか」
ほっとした表情はまるで子供だ。意外とわかりやすい男だ。
彼の癖や性格、ふとした仕草。知れば知るほど不思議な気持ちになった。本当はこれ以上――知りたくはない。
別れがつらくなるから。死という別れはいつどんな形で訪れるかわからない。これはハンター試験なのだから。
芽生え始めている気持ちを無視して、腰を上げてその場を離れた。
「俺のターゲットもおまえじゃないぞ!!」
背中に届いた力強い言葉。振り向くことはできなかった。
きっとゆるぎない意志を持ったきれいな瞳で私を見てくれているに違いない。そう思ったから。
それでもお互いの幸運に感謝して、口元は少し緩んだ。
あともう少しだけ、このまま隣にいたいから。
2012/01/08
新アニメ14話のレオクラシーン。毎度アニメスタッフの罠にはまる!
もどる