出会えなかった場合の人生を想像することは、しなくなった。
極論
「なあ」
この「なあ」に対して返事はせず、代わりに目線で答えた。
こういうやりとりは、通算で何回になるのか。わからないくらい、二人は共に過ごしてきた。
これからも、そのつもりだ。
「俺らって、なんでこんなに一緒にいられんのかね」
驚きはしない。レオリオの顔はいつもと変わらないし、自分も特に深く考える必要はないと思った。
今日メシなんにする?とか、あした遅くなるわー、とか、そういう類の「なあ」と変わらない。
たしかに今までいろんなことがあったが、互いに別れようと思ったことはなかった。
長く一緒にいることで情がわいたとかいうのはよくある話。
けれど、それは違った。多分一人なら一人で生きていくことくらい、この二人ならできていた。
「そうだな」
ちょうど飲み終わった紅茶の2杯目を注ぎながら、クラピカは口を開く。
レオリオが出張先で見つけてきてくれたこの茶葉は、なかなかおいしかった。残念ながらもうすぐなくなりそうだ。
「おまえがいい男だからだろうな」
「なるほどね。じゃあ俺も、おまえがあんまりいい女だったから他に目がいかなくなっちまったわけだ」
極論を行ってしまえばそうなる。
恋が愛に変わって家族になっても、変わらずに恋をし続けていられる。
そんなことが可能なのは、きれいごとなしで相手の外見が好みだからだろう。
それに加えての中身なのだ。それを最近、互いに実感している。
「おまえって、いくつになってもかわいいしな」
「レオリオも最初から老け顔だから違和感がないな」
「ほめてんだろ?」
「当たり前だ」
二人同時に椅子から立ち上がった。
レオリオは手際よくスーツの上着にそでを通した。
「んじゃ、行ってくる」
「気を付けてな」
「クラピカも今日は仕事だろ?」
「たぶんおまえより遅くなる」
「了解。リクエストは?」
「この間のスープが食べたい。おいしかった」
「かしこまりました」
いつものようにクラピカの細い顎を持ち上げて、いってきますのキスをした。
2011/11/03
それくらい、二人はお似合いだと思うんです。
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