妙にバランスの取れた家事分担
「ではこれから会議をおこなう」
「さっさとするのだよ。遅刻する」
「ノリわるいなあ」
「はやくしろ」
友達でもなんでもない。
同居人。
しかし変だ。
気を遣うことも無く
まるで何十年来の友人のようにリズムよく会話ができる。
しかしそれは「仲が良い」ということには結びつかない。
日曜日、クラピカはこれからバイトだ。
準備していたら突然レオリオが改まった顔でそこに座れと言ってきた。
なにかと思いきや「会議をおこなう」である。
小さなテーブルに向かい合う。
「同居するにあたり家事を分担する必要がある」
「ああ」
「みたところおまえはなにもできそうにない」
「!!」
「図星か」
「失礼なことを言うな!」
「手っ取り早く、おまえはゴミ捨てと風呂掃除だけやってくれ。
あとー、そうだな洗濯。
料理と掃除と買い物はオレがやる」
「・・・」
「不満かよ?」
「いや別に」
そう、たしかに家事などできないに等しい。
自分で食べるものだけならなんとでもなった。
だがレオリオにまで毎回コンビニ弁当などを出すわけにはいかない。
最低限の料理をしなければいけなくなる。
それができるかと問われれば
否。
「すまないな」
「おお、めずらしい謝るなんて」
「・・・」
その日から、とても「アンバランス」な家事分担で生活することとなった。
朝起きると、レオリオが朝ごはんをつくってくれている。
・・・おいしい。
ほぼ同時に家を出る。
私はゴミを持って出る。レオリオはバッグを一つ持って出る。
そのバッグは、私が持つゴミよりもはるかに、はるかに重かった。
お弁当も彼が作ってくれる。一人分も二人分も変わらない、と言って。
クラスメイトからは、「すごーい、これ自分でつくったの?」とほめられる。
何も言えなかった。
帰ってきて、洗濯をする。
そしてレオリオが帰ってくる。
夕食も作ってくれる。その間に私は風呂掃除をする。
部屋の掃除はというと、私が気付かぬ間に、きれいになっている。
なんだかこれでは、レオリオが私の母親のようだ。
ふと思った。こんななにもできないお荷物な女と暮らしていては、いつか彼がぶち切れるかもしれない。
それとなく彼に聞いた。
「いやなんかオレ、世話するの得意みたい。いっそのこと、金持ちの家に嫁ぐかな」
そして数年経つ。
端から見るととても偏った家事分担。それは今でも変わっていない。
私が相変わらずするのはゴミ捨てと風呂掃除と洗濯。それだけ。
・・・いや、もうひとつ、増えたのだ。
レオリオの相手をすること。
「ただいまー、クラピカー、おかえりのギュウはー」
「・・・・・」
(おそらく)へとへとになって帰ってくるレオリオを癒すこと。
この数年の間で、ちゃっかり恋人同士にまでなってしまった。
帰ってくる早々抱擁を求めるレオリオに、素直に応じる。
「っはあー、つかれた」
「おつかれなのだよ」
「じゃあ夕飯作るからな」
「今日は私が作った。いつもおまえばかりで悪いからな」
力を込めて私を抱きしめていたレオリオの腕が、びくっと震えた。
鍋の中には
狂った味付けの煮物。
「おまえはさ・・・その、料理とか掃除なんかよりオレの相手大変だろうからさ」
料理はオレがやるよ。
と、言われてしまった。
その日から、彼を見返すための特訓が始まった。
2010/01/11
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