レオリオが数年間住んだという国へ引っ越してきた。
そこには四季があった。
同じ空の下で
ルクソ地方は一年を通して寒かった。
だからクルタ族は色が白い。暑さに弱い。
レオリオが南国出身だということは、彼と一緒にいるうちにわかった。
極端な二人が一緒に住む為に、中途半端な気候の場所へ住むことにした。
そこはレオリオが母国を出てから、数年ではあったが最初に滞在したところらしい。
「いいところだったなあー。そりゃ自分の国が一番だけどさ。あそこは季節があるんだよ」
無意識なのだろう、ネクタイに手をかけて、目を細めて彼は言った。
こうして隣でレオリオが発する言葉に耳を傾けているときが好きだった。
彼が思っていることを私が受け止める。そして理解する。伝え合う。
どんな些細な言葉でも
私は彼のお喋りが好きだった。
その「いいところ」に住み始めて早2年。
地理もすっかり把握し、第2の故郷となりつつあった。
やっぱり私は「夏」が苦手だ。
レオリオも「あちぃ〜あちぃ」と口ではいいながらも、彼なりに夏を満喫しているようだった。
私はというと、本気で死にかけた猛暑日が何度かある。
エアコンは使わない。人工の風が二人とも嫌いだから。
初めて目にした「扇風機」とやらも、首が回るのには驚いたが、私には熱された温風が送られてくるだけ、
まさにドライヤーと同じに感じられた。
もうなにもかもが「暑い」この季節だが、レオリオと抱き合うときだけは、不快な「暑さ」はなかった。
優しい温もりも交わる汗も、心地良かった。
夏の終わりを雨が告げた。
何日か降り続き、秋はやってきた。
「まったく洗濯物がたまりっぱなしなのだよ」
「オレも替えのパンツがなくなってきたぞ」
「・・・・」
家の前にはキンモクセイがある。
秋になると金色の小さな花が咲き始める。
私はこの香りが大好きだった。
出かけるたびに、帰ってくるたびにその香りが私を迎えてくれる。
そしてそばには変わらずに、移り変わる季節を一緒に過ごせる彼がいる。
同じ空の下で、いつもと同じように、彼のお喋りに耳を傾ける。
来週は隣国の大学病院に出張だとか
そうだ、そろそろ新しいスーツを買おうと思ってるんだとか
子どもは何人つくろうかとか
そんなこと。
今年も、心地いい秋を。
2009/09/21
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