真夏の夜の夢
非日常。つまり、この状況、夜中の学校に侵入。
人は非日常に少なからず昂るらしい。
「体育館の鍵は校務員室か職員室だ。二手にわかれよう」
”山岸風花”救出のため訪れた深夜の学校。もちろん真っ暗。
美鶴先輩、順平、ゆかり、真田先輩、そして私、いつものメンバー。
「職員室かー。てことは、テストの問題とかあったりして・・・!?」
「・・・私の目の前で不正の算段か?」
「あ・・・っいやいや!生徒会長である桐条先輩の前でそんなことするわけ・・・」
「おまえは私と一緒に校務員室だな。槇村、職員室は任せる。誰と行く?」
ゆかりに目配せすると、呆れ顔。順平はいつもこんな感じ。
「あ、じゃあ真田先輩、行きましょう」
「ああ」
隣にいた真田先輩を指名した。特に意味はない。ほんとに。
でも、リーダーとして戦闘パーティを組む時、真田先輩を頼りにしちゃってる私がいる。
「では後で落ち合おう。二人とも行くぞ」
美鶴先輩はいつも通り、キリッとした口調でそう言った。
というわけで、真田先輩と二人で、真っ暗な校舎の中、鍵を探しに。
「なんか夜の学校ってやっぱ不気味ですね」
「なんだ、怖気づいたか?」
「べ、べつに・・・むぐ」
「――誰か来るぞ!」
先輩に引っ張られ、玄関ホールの大きな柱の陰に隠れる。
ああ、見つかっちゃいけないんだ。
今更、それを実感した。
・・・
足音がした。
俺の耳は他人よりも若干いいと思っている。とっさに隣の槇村を引っ張って柱の陰に隠れた。
「・・・警備員か」
懐中電灯らしき光が床を照らしている。同時に足音も近づく。
廊下側の様子をうかがいつつ、二人で身を寄せ合った。
――そこで意識したのがいけなかった。俺はバカだ。
ふと香った、鼻をくすぐるいい匂いに気を取られた。ふわりと揺れる、槇村の髪だった。
目線を落とすと、予想よりも小さくて丸い肩がそこにはあった。
そうか、こいつは女なんだ。
戦っているときは誰よりも強くて、誰よりもリーダーらしいのに。
体はこんなに華奢だ。
別に女子を近くに感じないわけじゃない。
むしろいつも誰かしら近くにいる。でもそれは必然じゃない。望んでもいない。
思えば、歩くたびに楽しそうに揺れるポニーテールに、いつも目が行っていた気がする。
――いつだって楽しそうなんだ。こいつは。
「先輩!どうやら行ったみたいです」
ぼーっとそんなことを考えていた。
だから槇村がこちらを振り返ったとき、相当に間抜けな反応をしてしまった。
・・・顔が近い。
「!!・・・・あっ、ああ、そうだな」
「どうしたんですか?」
「・・・いや」
ぱっと顔をそむけた。
周りが暗くて、助かった。
「見つかったら、逮捕されますかね?」
「深夜の職員室に忍び込むなんて、まあ停学は免れないだろうな」
いつもの俺に戻るのに、少し時間がかかった。
2011/08/08
一番最初の真女主妄想がコレでした!このイベントは萌えました。先輩の目は節穴か!