白い恋人達


クリスマスイブだあ?
そんな浮ついたイベント最初からないのと一緒。
俺らを誰だと思ってんのよ、スポーツに燃える健全な男子学生よ?
イブだろうがなんだろうが部活に向かう。そんで帰りは部活仲間でコンビニに行って、少し豪華に甘いもんでも買って――
あ、それはほらあれだよ、ちょっとでもクリスマスムードにあやかっといたほうがいいかなみたいな。なあ部長!

「いや、悪いが」

言葉とは裏腹に悪気なんて全くない、当然のような口調で返された。練習終了後の更衣室。
声をかけた「自称ナンバー2」の3年生、沢村をはじめ部員たちは同時に真田に注目する。

「なんでだよ!?おまえが付き合い悪いのは百も承知だけどさあ、去年は一緒にみんなでクリスマス過ごしたじゃねえか!」
後ろで見守る部員たちの声を代弁して、沢村は真田に詰め寄った。しかしそれもさらりとかわされる。
「すまないな」
「なんだよもー・・・おまえが女とデートってわけでもなかろうし」
「その可能性は俺にはないのか?」
「は?」

その発言に再び注目が集まる。更衣室内は異様な静けさが漂っている。
今のはどういう意味だ。なんて考えるまでもないのだが。
「ウソだろ」
「嘘じゃない」
「だ、誰だよ!?」
「なにが」
「誰とデートなんだよ!?」
「・・・あ、いや、それは別に」
聞かれたから質問に答えていたまでなのだが、ここからはいろいろ芳しくない。
「言えよ!」
「・・・黙秘権を行使する」
「はあ!?」
「どいてくれ。シャワー室にいくから」
「何の準備だよ!?」
「何のって・・・練習後は必ず浴びてるじゃないか」

いくらキレのある突っ込みをしても的外れなボケが返ってくる、それを延々と繰り返す。
クソ、真田がこんなにめんどくさい奴だったとは・・・

「じゃあな。おつかれ」
「あっおいこら待――」

ピシャン、と閉められた立てつけの悪い部室の扉。
誰も言葉を発しようとしない。室内にいるのは主に1,2年だからだ。
必然的に3年生の沢村が痺れを切らすのを待つしかない。
「なんだよ!?ありえないだろアイツに彼女とか!」
そう、こんな感じに。あとは後輩がつきあえばいい。
「まあ・・・ええ」
「あいつの取り柄って顔だけだろ!?」
「それはかなり語弊が」
「俺知ってるよ!?あいつの女の子の扱い方!同じクラスだもん」
「え・・・と、どんな」
「無視。邪魔扱い。最悪だろ!?」
「・・・」
「俺の方が背も高いし足も長いのにさぁ〜!」
「せ、先輩、ほらもう行きましょう」
「そうっすよ・・・コンビニのケーキおごりますから」
「そうだ、シャンパンも」
「むしろ肉まん買い占めましょう」
「いやここはおでん全種コンプリートで」

・・・

「待ったか?・・・馨」
「ぜんぜん!」
「一応早めに切り上げてきたんだが」
腕を組んだり手をつないだりはしない。
出会いがしらにいきなりそんなことができるほど、まだ慣れてはいない。
こうして目を合わせて隣を歩くだけで精いっぱいだ。
「じゃ、じゃあ・・・いくか」
「はい!」

お互いの鞄に忍ばせてある、初めてのクリスマスプレゼント。
喜んでくれるだろうか。

2011/12/23
クリスマスネタのSSが多すぎることは自覚してます(笑)