おそろい


あれでもないこれでもない。
ああ、でもこっちのスカートとジャケットは意外とかわいい組み合わせかも。
でもミニも捨てがたいし、そうするともう一回髪型変えたいし。

かれこれもう1時間。朝早く起きたから問題はない。「彼」と付き合う上での早起きはもはや必須事項だ。最近ではそれが自然と身についてきた。
寮の自室、ベッドの上に手持ちの服をすべて投げ出して、全身鏡の前でくるくると回る。そのたびに長い髪はふわりと揺れた。

俺はベッドに浅く腰掛けて、そんな彼女をなんとなく見つめていた。
「どこか行こう」と久しぶりに誘ったら、「ちょっと待ってて」と言うからちょっと待ったら、ちょっとどころじゃない。
半ば強引にこうして部屋に押し掛けたというわけだ。
最初の頃は準備なんか10分で終わっていたのに、今ではこのありさまだ。
それがどういう心境の変化かなんて、男にはどうにもわからない。
まあいい。こうして待つのもなかなか楽しい。
軽く足を組んで、膝の上に手を重ね、少しだけ前のめりになる。時々馨はこちらを振り返って、申し訳なさそうに笑う。
もうちょっとだから。そう視線で訴えられて、小さくため息をついて「早くしろ」と笑えばいい。

馨は最後にマフラーの色で悩んでいるようだった。
いつもの赤いマフラーと、あまり見ない大き目のチェック柄。
両手に持って、それを上下に動かして見比べている。
くるりと振り返ると、俺に決断をゆだねるように視線を送ってくる。
それに内心ぎくりとして、「どっちもいいんじゃないか」とのどまで出かかると、馨は「あ」とひらめいて、チェック柄の方をベッドに放り出した。

そして満足したように、赤いマフラーをふわりと首に巻く。鮮やかな赤。馨は小さなバッグを肩に下げながら、笑顔でこう言った。

「おろそい」

「ね」と言い足して、二人で部屋をあとにした。それは彼女の瞳の色かもしれないし、俺がしているマフラーのことかもしれない。

2012/01/18
二人のゲーム中の私服は共通色があるよねっていうネタをいただきました。二人が並ぶとお似合いすぎてにやにやする。