夏色
幾月の計らいで訪れた屋久島旅行。
全員が水着でビーチに揃ったところで、なにやら順平は興奮気味である・・・。
「ね、ね、真田サン!」
「なんだ」
「ぶっちゃけ誰が好みっすか?」
女性陣に背を向け、順平が小さな声で、しかし興奮したようすで真田に寄ってきた。
真田は眉をひそめてため息をついた。まったく、おまえの頭はいつもそれしかないのか。
「・・・なんでそんなことおまえに言わなきゃならん」
「だーっ!またコレだ。男同士だしいいじゃないすか!」
「・・・」
「てか今更なんですけど、真田サン彼女とかいないんすか?」
「いるわけない」
「・・・って、あんなに選びたい放題なのに?もったいねーっ!
少しくらいオレにわけてくれたってバチあたんないっすよ」
「興味ない」
「しっかし周りにレベル高い女の子が4人もいるといいもんっすね!
じゃあオレからいきますよ?ぶっちゃけちゃうと、風花っす」
「・・・そ、そうなのか」
「恋愛対象っていうか、タイプの話っすけど」
「・・・そうか」
「さ!真田さんも白状してください。オレはもう言いましたからね。フェアに行きましょう」
「・・・」
「ま、まさかあの4人よりもハイレベルな女の子希望っすか?あんたどんだけ贅沢なんすか!」
「か、勝手に決めるな!・・・わかった、言う」
「そーこなくっちゃ!で、誰っすか?
癒し系風花?いまどきの女子高生ゆかりっち?綺麗どころの桐条先輩?
はたまた校内でもダントツ人気の馨ッチ!?」
「・・・(ボソ)」
「、え?き、きこえないっす」
「・・・・ま・・・槇村だ」
「えっ!?そ、そうなんすか?!」
「声が大きい!」
「あっ」
「ちょっとー、なにやってんの男二人してー?」
明らかに様子のおかしい二人にゆかりは声をかける。風花も美鶴もこちらを見ている。
「な、なんでもねーって」
「?ふーん」
「ふぅー、・・・それにしても・・・そーなんすか、真田さんの好みがわかりました」
「なんだその顔は!」
「え?いやー、別に?馨はかわいいですからねー、
確かに追っかけ女子の中にあんなかわいい子はいませんよねー」
「・・・ふん」
「なになに?何の話?」
「え?いやー、ついに真田サンの好みが−−って、えーーっ!?」
いつの間にか二人の間に入っていた馨。真田と順平は突然の馨の出現に慌てふためいた。
「か、馨ッチ・・・・その、聞いてた?」
「なにを?」
「えーっと・・・、真田サン、どうぞ」
「なぜ俺に振る!」
「?」
馨は必然的に真田の返事を待っている。斜め下からじっと見つめながら。
「・・・・ッ」
「あーっ!真田さん、水着姿の馨ッチに見つめられて赤くなってる!!」
「!!、じゅ、順平!おまえ、殴られたいのか!」
「ちょ、冗談っす!手加減なしの真田サンに殴られたら即死だっつの!」
「先輩!リーダーの私に隠し事ですか?」
「なっ!?なぜそうなる!」
「二人で盛り上がっててずるいですー」
「だよなー!もう夏だし海だし告白大会しかないなこりゃ!」
「おい順平!」
「へ?告白・・・?」
・・・
「ったく、馨までなにやってんだっつーの」
「自分を持ちつつ何色にでも染まれるのが槇村のいいところじゃないか」
「順平くんはいつもどおりだけど・・・真田先輩があんなにあわててるの、初めて見るかも」
「ああ見えてわかりやすいからな、明彦は」
3人の騒ぎを遠目で見ていたゆかり、風花、美鶴。
つかの間の休息は、まだ始まったばかり。