Signs Of Love
真田先輩はいちゃいちゃするのが好きらしい。
こうして時間を重ねたからわかる。それは私にとって(たぶん私じゃなくても)意外な事実だった。
人前ではしないけど、無意識無自覚にくっついてきて私を焦らせることもある。
それは天然が故の結果であって、見せびらかしたいとかそういう気持ちは皆無のようだ。
基本は先輩の部屋で、二人きりの時に。
とにかく触れ合っていたいらしい。ひたすら髪を撫でられたり、後ろから抱きしめられたままだったり、寄りかかられたり膝の上に座ったり。
なかなか私を離してくれない。だから先輩の部屋での私の行動範囲は、先輩の膝の上が主だったりする。
人が変わったように甘えてくるわけでもない。いつもと変わらない、それでも少し柔らかい表情で、やさしく触れてくれる。
それがそのまま、いつのまにか、特別な意味を持った愛撫に変わって、延長線上としての行為になることもある。けれど回数は少ない。
たいていは、ゆったりと幸せな時間が過ぎていく。それが物足りないときもあったし、それだけで満足だったりする。
恋人同士ってなにをするんだろう。
こうしてくっついていることは、皆がすることなんだろうか。くっついて、感じて、安心して、時々言葉を漏らす。
あたたかい腕に抱かれていると、幸せすぎて泣きそうになる。どうしてこんなに、この人は私を愛してくれるんだろう。そう思ってしまうくらい。
最初だけ、なんだろうか。こうして馬鹿みたいにそばにいたくなるのは、最初だけなんだろうか。
年を重ねるごとに慣れていって、抱き合うこともしなくなるんだろうか。
嫌だな、そんなの。何年経ってもこうやって、なんにもしないでくっついていたい。そう思う。
なんだか急に不安になって、先輩の肩に顔を押し付ける。
顔がゆがむ。つらそうにひそめられた眉の動きを、彼は見逃してくれなかった。ちゃんと見てくれてる。それが嬉しい。だから怖い。
「なんだ」
「・・・、ううん」
「言ってみろ」
「ずっと・・・こうしてたいなって」
ずっと、って曖昧だ。今日一日ずっと、一生ずっと。どうにでもとらえられる。
言葉足らず。でも今更言い直せない。落ち着きなく身体をよじる。
すると、さらに強く抱きしめてくれた。不安はつきない。けど確かなものならちゃんとある。それを大事にしなくちゃいけない。
私の背中に回された長い腕は、なにかを確かめるように落ち着きがない。
耳元でやさしくささやかれた声も、ぎこちない。
「・・・、その、・・・今日は」
「うん」
「・・・いいか・・・?」
「うん、・・・したい」
「正直だなおまえは・・・」
嫌なら嫌って言う。事実そう言ったことも何度かある。
そうすれば先輩は「そうか」とだけ言う。
最初は気まずい思いをしたけど、今はそれが当たり前になってきた。
二人だけの「当たり前」。それが増えるのが嬉しい。
身体を離されて、見つめられる。ドキドキする。
頬に手を添えられれば、さらに鼓動は高鳴った。
ずっと、ずっと。
こうしてこの人に恋していたい。