桜の時
桜咲く季節に、運命は訪れた。
「な、なあ!アレ見ろよ」
「なんだよー」
「ホラ、あのちょい背の高いポニーテールの子」
「・・・」
「かわいくね?な、なんつーか、うちの生徒会長と岳羽さんを足して2で割ったような」
「・・・たしかに」
「あんな子いたっけか?」
「アレ?!てか岳羽さんも一緒じゃんか!」
「ほんとだ」
「うわーっ、かわいいのが2人並ぶとなんかイイなあ!一緒に歩きてーっ」
始業式の朝。
春らしい風が吹いている。学校へと続く道は月高生であふれている。
後ろの男子生徒の会話が聞こえてきた。「岳羽」という名前に引っかかった。最近うちの寮に入ったからだ。
ふとあたりを見回してみる。
・・・ああ、いた。岳羽ゆかり。彼らの言う「かわいい」かどうかはわからんが、
最近仲間に加わった、新たなペルソナ使いだ。まだお互いよく知らないが。
その隣には、確かにもう一人女子がいる。見慣れない顔だ。
二人の会話に耳を澄ませてみる。
「岳羽さんは、部活入ってるの?」
「うん!弓道部。槇村さん・・・は、何かやってた?」
「前はテニス部だったの。だから、ここでも入れたらいいなあって」
「そうなんだ!途中入部も確かオッケーだったはずだよ。あ、部活といえば、ボクシング部!マジ強いから」
「ボクシング部?」
「そう。主将の真田先輩ってさ、16戦負けなしなんだよ。すごくない?しかもファンクラブまであってさ」
「じゃあ、かっこいいんだ?」
「ま、まああたしは別に・・・って感じだけど、一般的にはイケメンなんじゃない?そのうち会えるから、さ」
「・・・?」
「ふふ。寮に帰ればわかるよ。あっ、ちょっと時間やばいかも。急ご!」
二人は駆け足で進んでいった。・・・何やら俺が話題に出されていた。勝手に人を登場させるな。
――そういえば、美鶴が言っていたな。もう一人女子が入寮すると。その意味は、つまり・・・
「あっ、いた真田先輩!」
「やだもう、今日もかっこいい」
「朝から会えるなんて超ついてる!」
・・・。
さっそくこれだ。後ろから女子数人が声をかけてきた。少し振り向いて、早足で距離を離した。
「あっ、まってくださいよー」
「でもそんなつれないところもかっこいいよねー」
おそらく、岳羽の隣にいた彼女が転入生だろう。そして”適性者”。
やれやれ、今年は一気に騒がしくなりそうだ。