恋話日和
ある日突然順平が俺に話があると言って、放課後付き合わされた。順平と二人で帰るなんてめったにない。
そのままワックに寄り、ポテトとコーヒーを持って席に着いたところで、順平は
「先輩、馨と付き合ってますよね」
・・・と。
これは質問か。確認か。疑問か。わからなかった。
「な・・・・っ、」
「あー、やっぱり。やっぱりそーなんだ」
順平は確信したらしい。
「おい待て、俺はまだ何も言ってな」
「自分の顔見てから言った方がいいっすよ、そういうセリフ」
「・・・」
顔が、赤いのか。
「オレ、真田サンは硬派だって信じてたのになあ」
順平は大げさにため息をついて、腕を組んだ。
「てか水くさいっす」
「・・・」
「オレら、仲間っすよ?SEESにたった二人しかいない、男同士じゃないっすか」
「待て、天田はどうした」
「アイツにはまだこういう色っぽい話はできませんから。そだ、もうデートとかしました?」
「な、なんでそんなこと言わなきゃならない」
「恋愛に同性の相談相手は必須っすよ。今ならオレがお買い得です」
・・・
「えぇぇぇー!?」
ワック店内に順平の絶叫が響き渡る。視線が痛い。
「ちょ・・・あ、あんたそれマジで言ってるんすか!?」
「ど、どういう意味だ!」
「初めての彼女と初めてのデートが・・・ランニングと牛丼なんて・・・」
「ま、まずかったのか?」
「・・・」
「そんな憐れむような顔をするな!」
「馨っちがかわいそうになってきました」
「そ、そこまで言うのか?!」
「もう・・・いいっす。よく聞いてください」
「あ、ああ」
「初デートってのは、休みの日に朝から待ち合わせして、彼女の服装をべた褒めして、
一緒にメシ食って、金は全部男が払って、手をつないで、そのまま白河通りでゴールっす」
「・・・ん、最後のはなんだ」
「言わせるんすか?ホテル街で――」
「ふざけるな!真面目に聞いたオレがバカだった。帰る」
「ちょ、じょーだん、じょーだんですよ!まあいきなりそういうパターンもあるってことですって」
怒りにまかせて立ち上がると、机の上の飲み物が揺れた。順平が慌てて俺をなだめてくる。
「だいたい手をつなぐのすらいっぱいいっぱいなんだ」
勢いに任せて言ってしまった。・・・これは失言だったかもしれない。
「ま、真田サンなら安心だな、馨も。泣かせないでくださいよ?」
急に真面目な顔で、そう言われた。
・・・まだ、泣かせては、いないはずだ。
馨がどんなに強くても、女の子っすから。
順平はしみじみと、そうつぶやいた。