見解


巌戸台分寮にお世話になるようになってから、もうずいぶんたちます。
私の今の幸せは、荒垣氏の手作りごはんと、犬ながらSEESの一員として活躍していることと、夜の散歩。

寮生は日替わりで散歩につれていってくれるのですが、やっぱり散歩の仕方には個人差があります。
こういっては何ですが、一番思いっきり羽を伸ばせるのが、真田氏との散歩です。

交通量の少ない夜の散歩で、自分の足の速さの限界に挑んでいるのですが、
それに付き合ってくれるのが今のところ真田氏だけなのです。
おかげで私の素早さは上がる一方です。

時々、馨さんも真田氏と一緒に散歩に来てくれます。
いつもの通り全力疾走で神社まで来た夜のこと。

犬一匹と人間の男女が二人。うんうん、こういうのが青春というやつなのでしょう。
というのも、私はこの二人が恋仲というのを知っているから。
二人きりのラウンジ、とか、私の存在を無視して、いい雰囲気になっていることがしばしば。
そんな時は、気を利かせて裏口からこっそり外に出ます。
というか、いたたまれない、という方が正解か。

「ねえ、そういえば、コロちゃんと私って似てると思いません?」

二人はベンチに座って、私は二人の足元にうずくまって休憩していた。
夜の風は気持ちがいい。ここに来ると必ず「彼」を思い出したが、今は胸が痛むことはない。
馨さんがにっこり笑って私の顔をのぞきこんだ。

「・・・どのへんが?」

真田氏が不思議そうにつぶやいた。
私もそんなことを言われたのは初めてだ。

「ほら、瞳の色とか!」

ああ、なるほど。
確かに鮮やかな赤は、おそろいと言えるかもしれない。
私はアルビノだから赤いのだが、馨さんもそうなのだろうか。
・・・人間でアルビノ?ああ、「オッドアイ」というやつだろうか?
そのへんはよくわからない。

どちらにしても言えることは、馨さんのきれいな赤い瞳は、いつもまっすぐに真田氏を見つめていることくらいだろうか。

2011/10/06