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さりげなくそばにいてくれる。
ほんとうに、さりげなく。



点と点




「何を考えてるのかわからない」。
彼を知る人はみんな口をそろえてそう言う。
それはあまり変わらない表情のせいかもしれないし、
口癖の「どうでもいい」が影響しているのかもしれない。

けど、冷たくはない。
タルタロスの探索の時、さりげなく私をかばってくれていた。
それに気が付いたのは、最近だった。
もう半年以上たつのに、最近気づいた。

あの時も。あの時も。思えば、彼がいたから私は大きなけがをしなかった。
・・・わかるわけない。ほんとうに、「さりげない」かばい方だったから。
彼にとってそうすることが、呼吸をするのと同じくらい当たり前のことのように。

「ねえ、有里くん、放課後暇かな?」
「たぶん」
「じゃあ買い物付き合ってよ!」
「・・・ん」

こうしてさりげなく隣にいてくれる時間が、なんだか一番安らぐ時間だってことに、やっぱり最近気が付いた。
勘弁してよ。
私は、あの人みたいに――母さんみたいにはならないって決めたのに。
一人で幸せになるって、決めたのに。

こんな気持ちは知りたくなかった。

「・・・ゆかり」
「なに?」
「それ、こないだ買ったやつじゃない」
「・・・や、色違い、ほしいな・・・みたいな」
「ふうん」

化粧品を買うのに男連れなんて、まあ確かにおかしいかもしれない。
だいたい今日は本を買いに来たのに、いつの間にか彼を連れ回してしまった。
しょうがないじゃない。かわいくしたいお年頃だし、勝手に体が動いちゃうんだし。
特にリップなんか、たくさん持ってた方がぜったいいいもん!

ていうか有里くん、先週一緒にこの店に来たときに買ったリップと同じのを今日も買おうとしてるって、わかったんだ。
・・・後ろでぼけーっとしてるだけかと思ってたんだけど、ちゃんと見ててくれたんだ。

変な人。
意味わかんないところでマメとか、ほんと意味わかんない。

「この色、似合うと思う?」

目当てのリップを手に取って、彼の目の前に差し出した。
聞いたことに別に深い意味はない。

「いいんじゃない」

そっけない一言。
けど私は知ってる。それが本音だって。

似合ってなかったら、容赦なしの「どうでもいい」がかえってきたはずだから。




2011/10/09
初の男主人公。私は主ゆかが好きです。

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