トラウマ
京都の高級旅館のロビーで男3人、並んで座るその姿はどこか哀愁が漂っていた。
「・・・」
「まさに、処刑だったよね・・・」
「言うな。もう思い出したくない」
はあ・・・。
もうこの溜息は何度目か。
「だから言ったろ。美鶴の処刑ほど恐ろしいものはないと」
「さすがに、懲りたなって感じっすよ」
「それにしても真田先輩、そんなトラウマになるほど美鶴さんの処刑を受けてきたんですか?一体何回怒らせたんです?」
「・・・聞くな」
「でも、目の保養ができたよね」
「そりゃまあな。処刑は忘れたいけどあの光景は一生忘れねーぜ」
まるで反省の色を見せない綾時の言葉に、順平は持ち前の調子の良さで徐々に復活してきた。
真田は理解に苦しむ顔で眉をひそめる。
「で、・・・ちゃんと見たか?」
「もちろん。あそこで見なきゃ男じゃないよ順平君」
「だよなー!さっすがリョージ!男の中の男だ!」
「女の子のためだったら、男は命をかけるものだよ」
「あんなちっさいタオルじゃ隠せてないってな」
「いじらしいじゃない」
こいつらには学習能力がないのか?
あんな恐ろしい目にあって、この様子じゃまた同じことをやりかねん。
「誰がよかった?」
「お?それ聞いちゃう?そーだなあ、皆ハイレベルだったからなー」
「甲乙つけがたいよね」
・・・ん?
なにか大切なことを忘れている気がする。
真田はふと考える。
そうだ。あの中には、・・・馨がいた。
・・・・・・・・。
「おまえら」
「はい?」
「見たのか」
「やっだもう、ばっちりっすよ!なんたって命がけっすから!それなりのものを」
「全員か?」
「あれ?そーいや、えーと、なあリョージ、どうだったっけ?」
「僕がはっきり見たのはー、えーと」
のんきに指折り数えていると、二人の背筋が一気に凍る。いや、電気が走っているような。
その発生源が隣の真田からだということに、彼らは気づきたくはなかったが。
「・・・・」
「やだなー、真田さんどうしたんですか?そんな怖い顔して」
「ばかっ、リョージ!」
「むぐぐ」
「俺ら、あれですから!馨だけはほんっと見てないっすから!」
「・・・」
「むしろあの時、馨ッチいたっけ!?いやー、顔すら見てない気が」
「・・・むぐむぐ」
「そうか」
冷凍された翌日に電撃で黒焦げ(クリティカルのストレートつき)にされるなんて、俺はごめんだぜ。
もちろん我らがリーダーのあられもない姿はこの目にしっかり焼き付けたわけだが、そんな事実を口にしたが最後だ。
あの中で一番スタイルがいい彼女の体は、真田サンだけのものってことっすね。はいはい、わかりましたよ、もうしませんから。
2011/10/14
やっぱり書いておきたい修学旅行編。