代弁者
天然な彼氏を持つと苦労する。
うちのリーダーがその典型です。
「ねえ、馨のその髪型ってかわいいよね!」
「うん、個性的で目立つよね。どうなってるの?」
ゆかりと風花は興味津々だ。なぜか寮生が集まった帰り道。
結構な大所帯になっている。
「どうって、アップにしてひとつにしばってるだけだよ」
「そうなんだあ、すごい時間かけてアレンジしてるかと思ったのに」
「さすがリーダーですね」
いや、それは関係ないんじゃ。風花以外の誰もが思った。
「じゃあさ、下ろすとどうなってんの?そういや見たことないし」
「んーとね」
ゆかりの質問に馨が口を開こうとすると、彼女の隣にいた真田が当たり前のように話題に入ってくる。
「美鶴より長いな。意外とくせ毛だし」
馨は驚いて真田を見る。ちょ、なんで私のセリフを・・・。
「あ、もうすぐ修学旅行だよねー!馨、意外と寝相悪いでしょ!朝起きたら私の布団持ってってた、とかやめてよねー」
「ゆかりひどーい!」
女子特有の盛り上がり中に、またしても真田は口をはさむ。
「そんなことはない。おとなしいもんだぞ。たまに殴られるが」
さっきよりもレベルアップした無自覚の爆弾発言に、馨は真っ赤になって彼を戒めようとした。
しかし無効、それどころか反射。いや吸収かも。
「ちょ、ちょっと先輩!」
「なんだ、事実じゃないか」
「いや、そういう意味じゃなくて!」
多分わかってないのは真田だけだ。
ああもう、当事者以外にとってこういう空気は慣れても居心地のいいものではない。
どうして二人の惚気をマジメに聞いてなきゃならない?
それを無意識にやってのけるのが真田の一番の恐ろしさだ。いちばん被害にあっているゆかりはそれを逆手に取った。
「ねえ、じゃあ夜の馨は?」
「そりゃかわいいに決まって・・・―――、た、岳羽!!!!」
「先輩のバカァ!みんなの前でなんてこと言うんですか!もうお嫁にいけません!」
「わ、悪い!つい口が・・・嫁なら俺がもらってやるから、そんな風に泣くな」
「そうだけどそうじゃないんですー!!」
うーん、どちらにしてもこうむるダメージは同じのようだ。
2011/10/23
甘いっていうよりどちらかというと見るに堪えないほどアホなのでこちらに分類。
こうなるとわかっていても書きたくなるのが不思議。