あなたを喜ばせたい。
ただそれだけ。






プレゼント





私の毎日は
単調だった。
「緋の眼」に関してめぼしい情報もここ最近少なく、同じような仕事をこなす毎日だった。

その間、レオリオは医大受験に挑戦した。
彼の合格を誰よりも願っているのは私だと思いたい。
彼のがんばりを誰よりも見ているのは私だけだと、信じたい。

彼の夢を、私はそばで見守りたい。
そんな叶いそうも無い儚い夢を見続ける弱い自分を自分で嘲笑う日々だった。
丁度マンションに帰宅した時のことだった。
ポケットからバイブ音。
メールが一通。レオリオからだった。
合格した
その旨が2、3行にわたって書いてあった。
よほど急いでいたのか興奮しているのか、誤字が目立つ文面だった。
私はその場に座り込んで
心からの祝福の言葉を彼に送った。

それから数週間。
レオリオが私のいる街に会いに来てくれた。
電話でそう聞き、忙しくないのか?と聞くと<
合間を縫ってでも会いたいのだと
大好きな低い声で言われた。

私の仕事が終わり、待ち合わせ場所のビルの前へ。
ポケットから手鏡を取り出し、自分の顔を見る。
ほんとうはもう少し小奇麗にして会いたかったのだけれど
時間がなかった。
風で乱れた髪を手ぐしで梳かし
レオリオに、少しでもよく見られるように意味も無く鏡を見つめた。

時間丁度にレオリオは車で迎えに来てくれた。
久しぶりの彼の笑顔は
ちっとも変わっていなかった。
・・・会えて嬉しい。

嬉しさを隠しきれないままの微妙な笑顔で助手席に乗り込む。
同じ空間にいられることが、こんなにも、嬉しい。

「・・・レオリオ、合格おめでとう」
「ああ、ありがと」
「私からの合格祝いだ。受け取ってくれ」
このセリフを言うのに、とても緊張した。
人に贈り物をするというのは
こんなにもドキドキして
わくわくするものなのか。

バッグから取り出した、ラッピングされた小さな箱をレオリオに差し出す。
その時の彼の表情を
今も忘れることができない。
いきなり差し出されたプレゼントに目を奪われたのは一瞬、
すぐに私の顔を見て
照れ臭そうな笑顔を見せてくれた。

彼は、まさかプレゼントをくれるなんて思いもしなかったと、驚きを隠せない様子だった。
レオリオはなにかと私にプレゼントをくれた。
何でもない日に、これ、使えよと、さりげなく渡されたり
たまに会えた日にはとびきりの楽しい思い出をくれたり
私はそのたびに嬉しくてしかたがなかった。

だから、その嬉しさを彼にも感じて欲しかった。
私は彼の真似をしただけなのだ。
この世で一番大切なあなたの笑顔をみたかった。
喜ばせたかった。ただ、それだけ。



以前の拍手御礼ネタを再アップ。
2010/04/01

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