理由
「・・・んだよ、その不満そうな顔はよ」
「・・・」
クラピカは目の前に出されたオムレツをにらみつけている。
料理上手なレオリオの手作りではない。冷蔵庫に入っていた、出来合いの総菜品である。
少ししなびて見るからに冷たそうだ。クラピカはそれに手を付けないまま両手を合わせた。
「ごちそうさま」
「はあ!?いらねえのかよ」
「残すのは不本意だからおまえが食べろ。食べ物は粗末にするな」
「あのなあ、あんだけ言ってんだろ?朝メシ抜くなって」
「いらないものはいらない」
「じゃあさっきから鳴ってる腹の虫を止めろ」
「生理現象だ」
「腹へってんじゃねえか!」
「意見を変えるつもりはない」
「〜、この強情っぱりが!」
まったくかわいくない表情をしているクラピカの額に、レオリオは自らの額を軽くぶつけた。
髪のこすれる音が耳に響く。そのまま5秒、10秒。クラピカはそっと瞳を開いて小さく笑った。
「懐かしいな」
「は?」
「まったく同じことがあった」
「・・・はて」
「覚えてないのか?ハンター試験だ」
「・・・、ああ、よく覚えてんな」
「まったく、顔が近すぎると思った」
「・・・しょ、しょうがねーだろ、あの時は女だって知らなかったし」
「今では当たり前の距離になったな」
そう言って笑うクラピカの顔を見て、あの時の感覚がはっきりよみがえった。
そのつもりはなかったのに、なぜかドキドキしたんだよなあ。まったく後悔した。
こそばゆいことを思い出させるんじゃねえっつの。
「話そらすなよ。ちゃんと食べろ」
「・・・朝はレオリオのスクランブルエッグだと決めていたのに」
「え」
「なんで今日は作ってくれないんだ」
「・・・」
「・・・」
「卵が切れたんだよ」
「なら買ってくる」
「じゃあ俺も行く」
「幸いまだ時間はある」
「つかおまえ、そんなことで拗ねてたの?同じ卵料理じゃねえか」
「悪いか」
「まだまだ子供だなあクラピカちゃんは」
「いくつだと思ってるんだ」
「17歳」
「馬鹿だろ」
「いつまで経ってもかわいいってことよ」
「・・・」
「ほら、行くんだろ。コート着ろ」
「・・・」
「マフラーもな」
キッチンの明かりを消して、二人並んで玄関へ向かった。
2011/12/09
新アニメ10話のレオクラシーンより妄想。
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