私を一人ぼっちにするな
クラピカはそう言って
オレの前で、初めて泣いた。
selfish
オレはそれまでクラピカの泣き顔なんて見たことがなかった。
いつどんな時でも勝気で強気で涙なんか見せなかった。
でもそれは強がりだったことに
オレは気付けなかった。
それはクラピカが
初めてオレに言ったわがまま。
「・・・帰りたくない」
顔を伏せたまま
ひどく弱い力で服の裾を引っ張られ
小さくこう呟いたのだ。
そのまま抱き寄せて唇を塞いだ。
レオリオはその日、クラピカの目の前で事故にあった。
道路に飛び出し轢かれそうになった見ず知らずの通りすがりの子どもを咄嗟にかばった。
車が低速だったこと、ブレーキを踏むのが早かったこと、そしてレオリオの反応が早かったことで奇跡的に大事には至らなかった。
――子どもも無事だった。
彼も腕と顔にかすり傷を負った程度だった。
入院の必要もなかった。
その日の夜、病院からタクシーに乗ってレオリオの部屋につくまで
クラピカは口をきかなかった。
クラピカは久しぶりの休暇でレオリオのもとへ来ていた。
予定では今夜発つはずだった。
部屋の明かりをつけ、クラピカは無言のままベッドに腰かける。
いつもとは明らかに違う空気に戸惑いながらその隣に座る。
クラピカが脱ぎ捨てた上着のポケットからはみ出している飛行船のチケット。
それを手に取り、「時間だろう」という意味を込めて渡すつもりだった。
「・・・帰りたくない」
それを制止した小さな声。振り返るのと同時にクラピカは続ける。
「おまえになにかあったら私は・・・」
どうすればいい?
その悲しげな瞳は直視するに耐えなかった。
それほど切なくて悲しかった。
クラピカは震える腕でレオリオの大きな胸に寄り添う。
「私を・・・ひとりぼっちにするな」
白い頬を涙がつたっていた。
優しくベッドに横たえる。少し湿った髪を撫でてやるとクラピカはレオリオの頬に手を伸ばす。
かすり傷といえども血がにじみ、痛々しかった。
「帰りたくない・・・レオリオ」
「・・・ああ」
「もう・・・一人ぼっちはいやだ」
さっきから再三同じ言葉を繰り返している。そして静かに泣いている。
「・・・もう黙れ」
低い声が全身に響く。
まだなにか言いたそうに薄く開いた唇を強引に塞ぐ。
それを待っていたようにクラピカもそれに応え、受け入れた。
「・・・っ、レオリオ・・・」
「・・・ん?」
返事をする必要のない呼びかけだった。
しかしクラピカの言う言葉には全て反応した。
オレはクラピカに
悲しさを与えたいわけじゃない。
だからもうこんな泣き顔は
見たくない。
「・・・熱い・・・」
「これからもっと熱くなるぜ」
細い身体がぴくっと震えるたびにベッドが大きく軋んだ。
「・・・レオリオ・・・、あ・・・っ」
「なに?」
「・・・っん・・・・、しつこい・・・っ」
やめるか?と身体の芯まで溶けそうな甘い声で囁くと
期待通りの返事が返ってきた。
華奢な腰が壊れそうなくらいに何度も激しく突き上げる。
こうして自分に全てを委ねて乱れていくクラピカを見ているのは
たまらない快感だった。
同時に溢れ出す行き場のないこの感情。
「・・・クラピカ・・・」
行為とは逆に優しく囁く。名前を呼ぶことで気持ちが伝わる気がした。
身体から引いていく汗とけだるい脱力感。
すぐ隣で眠りに落ちていくクラピカの肩を抱いて、そのあどけない寝顔をずっと見ていた。
頬には涙がつたった痕が残っている。
お互いしっかり繋ぎあった手は、汗がにじんできてもしびれてきても決して離さなかった。
ひとりぼっちになってから今まで
誰か彼女のわがままを
聞いてやったことがあるだろうか?
2009/04/02
レオ×クラ×ジオにて瀕死のレオリオに「私を一人ぼっちにするな!」(CV甲斐田ゆき)
あまりにレオクラすぎて驚きました。
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