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自分を殺す人生に意味なんてあるか?
背負う
もう戻れない。
一瞬でも後悔の念を抱いてしまった自分が許せなかった。
戻りたいと思ってしまうなんて。
もう戻れない。幸せなんて無縁だ。
復讐が――
形だけの復讐が終わる日、私は念能力を失った。
最後の「一匹」を殺す代わりに
ではない。
最後の瞬間に
止めをさす前に
私の全てがとまった。
「オレとおまえは二度と会うことはない」
黒髪のそいつはそう言って、消えた。
誓約を破っていない
ちゃんと私は生きている。
いったい、なぜ
どうして。
今日の為に
この瞬間の為に
生き抜いて、遵守してきたのに――
復讐という私のすべてを、果たすことはできなかった。
しかし今の私にはもう
人殺しの過去は消えない。
懐かしいあの場所へ足を運んだ。
しかしそこに師匠はいなかった。
「やめておけ、復讐なんて」
別れの日、師匠がなぜ私を止めたのか
分からなかった。
生きる意味を失ってしまった。
どうしよう、死のうか。
そうすれば楽になるだろうか。
しかし果たして彼らは私を許してくれるだろうか。
そう考えると、
行き場所が
居場所が
ない。
ふとレオリオの顔が頭をよぎった。
確かに彼は私の中で特別だった。
私は
レオリオが好きで
愛している。
その感情を否定することも捨てることもできなかった。
彼を想ったまま
死ぬことができなかった。
声が聞きたいと思ったときに
どうして彼は電話をかけてくるのか。
どうして私の気持ちを
遠くにいてもわかってくれるのか。
あの日からずっと道なき道を当ても無く歩いた。
飲まず食わずでもなにも感じなかった。
まだ血がついている右手を伸ばして
鳴り続けるケータイを取り出した。
「大丈夫か」
「・・・ああ」
「怪我は?」
「・・・平気だよ」
帰りたい。
レオリオのところに帰りたい。
声を聞くだけで、涙と共に気持ちがあふれ出した。
レオリオの優しさに触れて、
初めて
思った。
どうして私がこんな目に遭ったのか
そんな、独りよがりのわがままを――
復讐は復讐を生む。
復讐の産物を一生背負わなければならない。
「残るのは虚しさと、血にまみれた手だけだ。
おまえはそんなものを背負って生きていけるほど強くはない」
それは
わかっている。
わかっているのだよ、師匠。
レオリオだってわかっている。
けれど私を止めなかった。
そして私を迎えてくれた。
一生苦しむかもしれない。
逃げることも出来ない。
でも彼はこう言ったのだ。
「でも、一緒に背負うことはできるだろ?」
2009/07/05
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