一晩明けた月曜日。
ここに来て初めての夜は
大変だった・・・・・。
まぁ、とりあえず聞いてくれ。
この街で君と暮らしたい 04
規則正しい包丁の音。トースターの低い音。ほのかに香るコーヒー。
朝の、そんな定番な風景。そんな風景を作り出したのは一応、オレ。クラピカはようやく目を覚ましたようだ。
「おー、おはよ」
「・・・・・おはよう・・・」
「おまえ寝起きわりーなー。何回も起こしたんだぜ?今日学校だろ?遅刻すっぞ」
そういうオレも大学に行かねば、なんだが。昨日はろくに眠れなかったから、すげー眠い・・・・。
そもそもあんな状態で、やすやすと寝れるかっつの!
時はさかのぼって深夜である。オレがここにきて初めて迎える夜。
荷物も落ち着いて、夕食も食べて、(忙しかったので弁当)
風呂は・・・・・壊れているらしいので、銭湯に行った。
あとは――寝るだけ。勉強机兼食卓である小さなテーブルを片付けて、空いたスペースに布団を敷く。
・・・・・何度も言うが、六畳一間。ベッドなし。
二人分の布団を敷くと床はたちまち見えなくなって、手を伸ばせば触れられる位置にクラピカが寝ることになる。
これがどれだけ大変なことかオレはまだ知らなかった。いや、知らないふりをしていた。
お互いのめざまし時計の音がぶつかりあうほど静かな夜だった。
(・・・・・・・・・・・寝れねぇ)
左。左。左が猛烈に気になる。
今オレの目は仰向けにまっすぐ天井を向いている。左・・・。見れねぇ・・・。寝返りが打てねぇ・・・・・・・。
そうこうしている間に聞こえてきた規則正しい静かな寝息。見られなかった左を振り向いた。
おいおいマジかよ向かい合い。クラピカの顔は左にあった。なんで右じゃねぇんだよ・・・・・。
見れば見るほど(いやそんなに見つめてないけど)綺麗な顔だった。なんなんだオレは。5つも年下のガキなのに。
(〜〜あーーっっ)
埒が明かない。布団から這い出て、片付けたばかりの辞書たちを引っ張り出す。その音に、クラピカは目が覚めたようだった。
「・・・・・・?・・・なにしてるんだ・・・」
「・・・いや、バリケード作り」
「・・・・私はおまえに何もしないぞ」
「逆。オレがなんかしちまいそうだから」
普通こんなことすんのは女の方なんだろうけど。
「・・・わりぃ」
わけもなく謝った。
・・・・・・キャベツを包丁で刻みながら、ふと考える。
やっぱ溜まってんなオレ。恋人は1年前に別れた。そうとう古い話。遊び相手はいるが、どうにも本気になれなかった。
精神的に溜まってんのか?・・・・・・。
こんなんで本当にオレはここに住み続けられるのでしょうか。
つづく