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「あれ?馨、おっぱい大きくなった?」

ゆかりは何のためらいもなくそう発言した。夜も更けつつあるラウンジでのことである。
順平は盛大に体勢を崩し、真田はかきこんでいた牛丼をのどに詰まらせた。
「・・・!(ゆかりッチ・・・!!)」
「ぐっ・・・ゲホッ」
「真田先輩!」
隣にいた風花が必死に真田の背中をさする。

「えっ!?そうかな・・・」
「うん。ちょっといい?」
「え、ちょ、ゆかり!や、やだっ」
「大丈夫大丈夫、ちょっとだから」
真っ赤な顔で防御姿勢を取る馨に、ゆかりは容赦なく攻撃を仕掛ける。
二人は攻防の末、真田たちに背中を向けてしまったが、ゆかりが馨を羽交い絞めにしたのを見る限り、どうやら馨が負けたようだ。

(ちょ、待、コレいいの!?俺ッチ止めなくていいの!? 美少女同士の乳揉み合戦がナマで見れるとか・・・てかやるならせめてコッチ向いてよ二人とも)
(・・・・)(真田はまだむせて咳が止まらない)
(ゆ、ゆかりちゃん〜!!男の子もいるんだよー!)

「あっ、そ、そこはだめっ・・・」
「やだ、かわいい声出さないでよ」
「もう、ゆかりっ!」
「ほらやっぱりー、サイズ上がったでしょ」
「ん・・・っ、うん・・・」
「てことはー」

結果には必ず原因がある。
馨の胸が大きくなったという結果の原因は、どう考えても一つしかない。
ゆかりは馨に抱きついたまま、わざといぶかしい顔をして後ろを振り返った。
同時に真田が復活する。水を飲ませるなど、風花の手厚い介抱のおかげである。

「たっ、た、岳羽!おまえ、そ、そんなことしてタダで済むと思ってるのか!?」
「よく言いますよー、胸が揉まれて大きくなるなんて迷信かと思ってました」
「!!?」
「目に見えて分かるくらい成長するなんて、先輩よっぽど」
「や、山岸ー!岳羽の弱点は確か電撃だったよな!?」
「え、あ、えと」
「なら俺が有利だ!――ペルソナ!」
カッ
「ダメっすよ仲間割れはー!早くペルソナしまってください!」
「離せ順平!今日という今日は我慢できない」
「美鶴先輩に殺されますよ!」
「覚悟の上だ!山岸、アナライズ頼む!」
「・・・」

「・・・何の騒ぎだ」
美鶴がいつもよりこわばった顔で階段から降りてきた。鋭い目つきでラウンジを見渡す。
リーダーに後ろから抱きつくゆかり。しかもよからぬところに手が置かれている。
頭上に自らのペルソナを出したままの真田を順平が必死に止めている。
風花はそんな二人のそばでうろたえている。
美鶴はそんなイレギュラーな状況を把握し、誰に制裁を加えればいいのかを一瞬で判断した。

「・・・明彦」
「み、美鶴・・・」
「命が惜しくないと見た」
「違う!そもそもは岳羽が」
「言い訳は男らしくないな。影時間以外でのペルソナの召喚は厳禁だとおまえが一番よく知っていると思ったが」
「お、落ち着け!」
「黙れ!――処刑する!」

しばらくお待ちください

「・・・うわ」
「今日は一段とひどいな・・・」
「カチカチに凍ってます・・・」
「放っておけ。2,3日もすれば溶けるだろ」

美鶴のその言葉に、一同はぞっとする。
なるほど、これは確かにトラウマになりかねない。美鶴の経験値が少し上がった。