輝ける星 08
失恋てこんなかんじなんだ。
勝手に好きになって、勝手に終わった。
べつにふられたわけじゃない。
だた、あれは「おまえを妹以上に見られない」って言われてるとの同じだった。
だから嫌だったんだ。恋なんて。やっぱりろくなことがなかった。
――ろくなことがなかった?
・・・たのしかった。すごくうれしかった。
思い出すと、泣きたくなった。
すきになって、私が真田先輩に何を求めているのか、今わかった。
支えがほしかったんだ。安心して身をゆだねられる、そういう支えがほしかった。
やさしくされればされるほど、その気持ちは強くなってた。
しばらくは、どうしても目を見て話せなかった。
でもそれでみんなに迷惑をかけたくなかったから――無理やり立ち直った。
ゆかりは気づいてるようだったけど、あえて何も言わなかった。
心配かけたくないもん。
あんたねえ、そういうの、ほんとの友達っていうの!?
あとになって、そう言われた。怒られた。本気で。
わかってたつもり、だったんだけど。なんにもわかってなかった。
そんな時、真田先輩が私を屋上に連れ出した。
これ以上、なにがどうなるっていうんだろう。
その時は、そうとしか思えなかった。
・・・
楽しそうに揺れるポニーテールに、いつも目がいっていた。
気づいたら目で追いかけていた。
視線に気づくと、笑顔を返してくれた。
二人で神社に行ったあの日から、槇村は俺に笑顔を向けなくなった。
探索、作戦時、寮での雑談。避けられてはいなかったが、いつものように、”なんでもないのに嬉しそうに笑って”くれなかった。
押さえきれなかった。
頭よりも体が先に動く。槇村のおかげでそんな行動に自信がもてた。
半ば無理やり、彼女を屋上に連れ出した。
「もう、何も失いたくないんだ」
そう切り出した。
余計な前置きはいらない。
「おまえが俺の前で笑ってくれなくなってから、つらかった」
いつもと同じ、つかず離れずの、手を伸ばせば触れられる距離。
今日はそれすら遠く感じた。
「正直言うと、おまえの笑顔が、美紀とかぶったこともあった・・・」
重ねてしまっていた。それは俺の弱さのせいだ。
――けど。
「けど、今は違う」
まっすぐ彼女の方へ向き直った。
槇村は遠慮がちに顔を上げた。
まるでなにかを、怖がっているかのように。
そんな顔をさせてしまっているのは、俺だ。
胸が苦しかった。
手を伸ばせば、触れられる距離。
一歩進んで、距離を縮めた。
「今は、おまえの笑顔が見たいんだ・・・」
まだ遠い。
いつの間にか涙がつたっていた彼女の頬を、両手でそっと包んだ。
「もう一度、笑ってくれ・・・馨――」
やっとたどり着いた。目を閉じていても、存在を感じられる距離に。
やっと、会えた。――世界でたった一つしかない、大切な笑顔に。