ソイツは妙なやつだった。







青春生き残りゲーム 2








寮は学校の敷地内にある。
二人一部屋。
オレはまだルームメイトが誰だか知らなかった。
説明会ふけちまったからなあ。


「アイツ」のせいでイライラしっぱなしの入学式を終えて、初めて自分の寮へ向かった。
・・・おお、結構広い。きれいだし。

「えーっと・・・ここか」
3階の一番端の部屋へ向かった。
鍵を開けて入ると、玄関には靴が一足置いてあった。
それは紛れもなく男子用の学生靴なのだが
あきらかに一回り小さいサイズだった。
まあ、まだ成長期終わってないやつもいるしなあ。
ちょうどいい、ルームメイトに挨拶でもしとくか。


「うぃーっす、はじめま・・・・」
「――!!!」


ぱこーん


なんだ
どうした。

部屋へ入るなりいきなり視界が真っ暗になった。
床にパサッとノートが落ちる。
オレはノートを投げつけられた。


「・・・ふっ。いい度胸じゃねえか、オレに喧嘩を売るなんざ10年早いんだよ!!」
勢いよくソイツの胸ぐらをつかんだ。

どこかで見た、この顔。

「・・・あっ」


今朝のアイツだった。

着替えをしていたのか、ネクタイはほどかれて、ワイシャツのボタンが2つあいていた。


「まさか・・・この部屋のお方ですか」
「そうだ」
「・・・そうすか」


オレは手を離し、部屋を出ていこうとした。
「いったい何の用だったんだ」
「おまえのルームメイトだよオレは。でも無理だ。事務室いって部屋変えてもらってくらあ。
悪いがおまえと一緒に暮らすなんてオレはぜったいにいやだ」


全寮制のこの学校を選んだのには訳がある。
オレは医者になりたかった。
この学校は全国初の試みとして、国立医大へエスカレーターで行ける学科を作った。
もちろんそれ相応の努力は必要になるが。何より費用が大幅にカットできるのがでかい。
オレはやれることはすべてやりたかった。早めに準備をして、後悔だけはしたくなかった。
だから全寮制なのをしぶしぶ了承した。

しかしまさか
よりによってこんなやつだったとは
オレもつくづくついていない。


「それは無駄だぞ」
「なんだと」
「学則くらいちゃんと読みたまえ。特別な理由がない限り、部屋を変わることはできない」
「オレは嫌なことは決闘してもやらない」
「・・・」
「なにがなんでも変わってもらうぜ」



勢いよくドアを閉めて、事務室へ向かった。



「ダメです」
「なんでだよ!さっきから言ってんだろ、あんな凶暴なオトコオンナと一緒に住めるわけねーって!」
「生徒同士の問題は生徒同士で解決なさい」

窓口のばばあは聞く耳を持たなかった。
「ったくこのババア!もういーから寮母呼べよ」
「私が寮母です」
「・・・なっ」
「とにかくダメだものはダメ。勝手な真似したらすぐ退学よ」


まさか入学当日から退学という言葉を聞くとは思わなかった。
「〜ちくしょう!」

そこにあった傘立てを思いっきり蹴り飛ばして部屋へ戻った。






「どうだった」
「うるせー」
「いやなことは決闘してもやらないんじゃないのか。その様子だと決闘すらしていないようだが」
「うるせーっつってんだよ。ばばあ相手に本気になれるか」
「退学がこわいのか」


なんなんだよこいつは
口達者にもほどがあるぞ
さっきからオレの逆鱗に触れやがって。

「おまえ、殴られたくなかったら少し黙れよ」
「私は君に殴られるほど弱くはないよ」
「けっ、そんなヒョロヒョロのくせしてよく言うぜ」
「ならやってみるか」
「のぞむところだ」



部屋の間取りは6畳。風呂トイレはちゃんとある。並んだ机に2段ベッド。
プライベート空間の確保は、なんとかがんばれば・・・程度のもの。
そんな狭い部屋で、オレたちは新品の制服のことなどおかまいなしに、夕飯の時間までどつきあった。

「うるせーぞ!」
「なにやってんだよ!」
隣の部屋から苦情を飛ばされてもやめなかった。

こいつ
強かった。

オレが力で押すタイプなら
こいつはしなやかですばしっこい、頭を使った動きだった。


「・・・くそっ」
「どうしたもう終わりか」
「バケモンかおめーは・・・息一つ切らしてない」
「君は何も考えずに勢いだけだ。すぐバテるのは当たり前だ」
「なんだと」
「力なら君のほうが上だ。だからもう少し頭を使えと言っている」
「・・・ちっ」


正論だった。
オレだって、それがオレの弱点だってことくらい、知っていた。
わざわざ再認識させるような言い方しやがって。

「おめー友達いねぇだろ」
「なんだと」
「性格わるそうだ」
「余計なお世話だ」
「付き合わせて悪かったな」
「・・・え?」


オレは嫌なことは嫌だが、いつまでも引きずることの方がもっといやだ。
けじめはしっかりつける。それが男ってもんだ。

「おめーのおかげですっきりしたぜ」
「それはよかった」
「・・・メシにいくか」
「ああ」



すでにボロボロになってしまった制服のまま食堂へ向かった。
「は?もうとっくに片付けましたよ。食事の時間は決まってるんですよ」
あのくそばばあがだれもいない食堂で片づけをしていた。


「・・・ちくしょう!おい、てめーのせいだぞコラ!」
「言いがかりだ」
「おめーがさっさとオレに負けないからだ!」
「ほらすぐに頭に血がのぼる・・・」
「なんだと〜!!!」




オレの高校生活初日は最悪だった。




今までの私の中のレオリオは優しすぎたので(笑)、
原作とアニメを見直してちょっと忠実に書いてみます。
そのうちバカップルになることは否めませんが・・・。
さらにレオクラ中心は変わりませんが、積極的に他キャラも濃ゆい感じに出していきたいです。
ミトさんとかヒソカとかクロロとか・・・
目標は、「この街で君と暮らしたい」よりも長編にすることです。

2011/4/17

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