「もしもし、あ、クラピカー。え?お風呂壊れた?じゃあオレの部屋の使ってよ!
あ、でもオレちょっと出かけるからさ、鍵は開けっ放しにしておくからすぐ来てよ!そのまま使ってていいからさ」









青春生き残りゲーム 4








教室の中で私に声をかけてきたのはゴンが初めてだった。(ルームメイトのアイツはいいとして)
誰ともつるむ気はなかったが、ゴンの行動は興味深いものだった。
知らず知らずと彼といる時間が多くなった。

こういう時に頼りになる友人がいるとはいいものだ。
入学早々、私はそう思った。

ゴンの部屋は私の部屋の真下、2階の端だ。
彼のルームメイトが誰だかは、知らなかった。


3階と同じつくりの2階へ降り、ゴンの部屋へ向かった。
なるほど、鍵はかかっていない。さっそくお邪魔した。

やはり部屋の作りは同じだ。
しかしここがゴンの部屋であることの証拠に、トレードマークの釣竿が壁に立てかけてあった。
一方で、床に無造作に積み上げられたたくさんの本。これはゴンのルームメイトの私物だろう。
それにしてもすごい量だ。私も読書家だが、この多さには圧倒した。
・・・それにしても古書が多い。ずいぶんマニアックな高校生がいたものだ。


他人の部屋の散策はこれくらいにして、そそくさとバスルームへ向かった。
自室のシャワーが壊れたなんて死活問題だ。
シャワーの時間だけが、「本当の私」に戻れる時間なのだ。


しばらく熱いお湯を浴びている時だった。
バスルームの扉が開いた。

反射的に振り向いた。
そこには

漆黒の瞳の、男が立っていた。


あまりに突然の出来事に
5秒ほど硬直した。

すると男は無言のまま扉を閉め、部屋から出ていく音が聞こえた。



――見られた。



別に男同士であるならば、
「あぁすまない。失礼した」
「ははは、いいんだよ別に」
で、済む話だ。

私の場合、
シャワーを浴びられないことが死活問題であるならば
今のこの状況は
逃げ場のない最悪のパターンだった。






私が女であることは
絶対に誰にも知られてはいけないのに。
たった一週間で知られてしまった。






自分の愚かさが情けなさ過ぎて
泣けてきた。



お察しの通りこういうパターンです。
実はクラピカは男装して男子校に潜り込んでいたのでした。
それを最初に発見するのはレオリオじゃないのです。
いろんな意味で初の試み。

2011/4/24

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